50音お題(あ〜)
□あの人のいないこの日常で、
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あの人のいないこの日常で、
一体、
どこに行ったんだろう。
「クロエさん……」
クロエさんは、大人気アイドル超人――ケビンマスクのセコンド。でもって、その正体はかの伝説超人、ウォーズマンだった。わたしは彼に絶賛片想い中。ウォーズマンではなく、クロエさんにだ。
ふたりの何が違うのか、と問われれば、これだ!と言える明確な理由はない。ただ、なんとなく。クロエさんとウォーズマンはまったく違う超人って感じ。
何より、ウォーズマンとは話したことがない。……クロエさんがウォーズマンっていうツッコみは置いておいてほしい。わたしの中ではまだ、クロエさん=ウォーズマンではないのだ。
ああ、なんか。クロエさんのことを考えていたら、彼のことが恋しくなってきたよ。
「はあ、クロエさん……」
「はあ、クロエ……」
……んん? 今なんか、わたしの声以外の声が聞こえなかった?
わたし、ひとりっきりで土手から川を眺めていたつもりなんですけど。
ちらり、と声の聞こえた方向を見てみる。
「ぎょっ!」
見覚えのある鉄仮面超人がしょんぼりとしていた。
(ゲエエエエッ! ケ、ケビンマスク!!)
なんでこんな所にケビンマスクが!
「……あのぉ」
「ん……お前は確か――」
「なんであなたが――」
「クロエによく懐いていた……」
「わたしは動物ですか!」
この人の相手……疲れるなぁ。こんな人を(あ、超人だ!)手なずけ続けたクロエさんを尊敬しちゃう!
「クロエもよくこんなのと付き合ってこれたよな」
わたしの頭をぽんぽんと撫で(叩いて?)、ケビンマスクは言った。
「こ、こんなの……!」
さすがにアイドル超人だからって、何言っても許されるわけではないと思うんですけど! 酷い超人だ!
「こんな子どもっぽいのが趣味だったとはな……」
今すぐこの超人のマスクからはみ出ている金髪を……引っこ抜きたい! でも、力では敵わないだろうから、返り討ちにあっちゃう。泣き寝入りなんて、情けない。
……ああ、クロエさん。早く帰ってきてケビンマスクをどうにかしてください!
そして、彼のマスクからはみ出た金髪を、
引っこ抜いてやってください!!
わたしはなんとかやっていけています。