50音お題(あ〜)

□あの人のいないこの日常で、
1ページ/1ページ


あの人のいないこの日常で、



 一体、

 どこに行ったんだろう。


「クロエさん……」

 クロエさんは、大人気アイドル超人――ケビンマスクのセコンド。でもって、その正体はかの伝説超人、ウォーズマンだった。わたしは彼に絶賛片想い中。ウォーズマンではなく、クロエさんにだ。
 ふたりの何が違うのか、と問われれば、これだ!と言える明確な理由はない。ただ、なんとなく。クロエさんとウォーズマンはまったく違う超人って感じ。
 何より、ウォーズマンとは話したことがない。……クロエさんがウォーズマンっていうツッコみは置いておいてほしい。わたしの中ではまだ、クロエさん=ウォーズマンではないのだ。

 ああ、なんか。クロエさんのことを考えていたら、彼のことが恋しくなってきたよ。

「はあ、クロエさん……」
「はあ、クロエ……」

 ……んん? 今なんか、わたしの声以外の声が聞こえなかった?
 わたし、ひとりっきりで土手から川を眺めていたつもりなんですけど。
 ちらり、と声の聞こえた方向を見てみる。

「ぎょっ!」

 見覚えのある鉄仮面超人がしょんぼりとしていた。
(ゲエエエエッ! ケ、ケビンマスク!!)

 なんでこんな所にケビンマスクが!

「……あのぉ」
「ん……お前は確か――」
「なんであなたが――」

「クロエによく懐いていた……」
「わたしは動物ですか!」
 この人の相手……疲れるなぁ。こんな人を(あ、超人だ!)手なずけ続けたクロエさんを尊敬しちゃう!

「クロエもよくこんなのと付き合ってこれたよな」
 わたしの頭をぽんぽんと撫で(叩いて?)、ケビンマスクは言った。
「こ、こんなの……!」
 さすがにアイドル超人だからって、何言っても許されるわけではないと思うんですけど! 酷い超人だ!
「こんな子どもっぽいのが趣味だったとはな……」
 今すぐこの超人のマスクからはみ出ている金髪を……引っこ抜きたい! でも、力では敵わないだろうから、返り討ちにあっちゃう。泣き寝入りなんて、情けない。




 ……ああ、クロエさん。早く帰ってきてケビンマスクをどうにかしてください!

 そして、彼のマスクからはみ出た金髪を、
 引っこ抜いてやってください!!



わたしはなんとかやっていけています。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]