Kuzan

□ゆられゆられて
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グランドラインの気候は不安定なのが当たり前だが、
今日は珍しくも好天に恵まれていた。
けっこう遠くまで来たのだが、
嵐を見ることもなかったし波もいたって穏やかだ。

とはいえ、そろそろチャリを漕ぐのも疲れた。
そのへんの島で休憩して、折り返すか…





港についてみると、あまり治安のいい島、もとい街ではない
ということがすぐに分かった。
建物は小汚いし、通りのあちらこちらにはゴミが捨ててある。
どうやらこの島には海軍の駐留所は無いようだ。

「コリャ、長居は無用だなァ…」

俺は誰に言うともなく呟いて、とりあえず街を歩くことにした。
せっかく来たのだから、島一周分巡るくらいはしなきゃ
勿体ない気がする、というだけだが。

さてどっちまわりに行こうかと思案していた時だった。
ふと視界に、誰かが走っているのが見えた。
意識してそっちを見たわけじゃあなかったが、
通りを歩く人間がほとんどいなかったから
目についただけだろう。

走っていたのは、小柄な子供だった。
くすんだ茶色の長い髪に、薄い布一枚羽織ったような格好。
今自分がいる位置からでは、男か女かは判断できない。

が、その子供の後ろを誰かが追いかけていることくらいは分かった。
長身だから、俺はわりかし遠くまで見える。

子供はだんだん、俺の方に近づいてきている。
もちろんそれを追いかけるやつも、近づいてくる。
追いかけているのはどうやら大人のようだ。
逃げる子供より二回りほどでかい。

「あらららら……面倒事はごめんなんだけどなァ…」

巻き込まれそうな気がしつつも、俺はその場から動かずに
その追いかけっこを見ていた。

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