Kuzan

□君、どこの子?
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くすんだ茶色の髪の少女は、
俺が漕ぐチャリの後ろに腰かけてしばらく経ってから
ティアと名乗った。

俺は、少女がそう言った時は何の事かと思ってしまった。
俺が名前を尋ねてから軽く2キロは走っていたから、
名前を尋ねたことさえも忘れていたのだ。

少女は突然赤の他人に助けられて動揺してたらしく、
俺がチャリの後ろに乗っけてやる間も体が硬直したままで
ロボットか、ってくらい動きがギクシャクしていた。

そりゃ、赤の他人に助けられたりしたら動揺するのは当たり前だ。

少女は俺の背丈の半分くらいしかない。
まァ、女の子ならこれぐらいが普通だろうな…
俺からするとだいぶ小さいけど。

そういや、乗っけるために持ち上げた時も
ずいぶんと軽くて驚いたなァ…
落ちそうになって、俺のスーツを引っ張るティアを横目で見つつ
俺はぼんやりとそう思った。

ティアは、フードつきの薄汚れたマントを
下着の上に羽織っていた。
偶々風で肩のマントがめくれた時、その下に見えたのが
キャミソールだったのだ。
おそらく下も、ズボンやスカートなどは穿いていないだろう。

大体の部分はマントで隠れていたが、マントで隠すことができない足は
痛々しいほどに荒れていた。
靴は履いていないし、よく見るとあちこちが擦り切れて
血がにじんでいる。
そして、フードがつくる影のせいでティアの顔はよく見えない。
なんとなく分かるのは、幼い顔立ちであることだけだ。

「…ティアちゃん、君の住んでた島はどこ?」

俺は前を向いたまま、ティアに尋ねる。

グランドラインの島で売られる娘達は、
大抵がグランドラインにある島から攫われてくる。
むしろグランドライン以外の――イーストブルーや、ウェストブルーから
攫われてくることは滅多にない。
グランドラインを出るのも、グランドラインに入るのも
容易ではないからだ。

ならば、この子も――ティアも、グランドラインにある島の
出身のはずだ。
ここからそんなに遠くなければ送ってあげれるが、果たしてどうか。

俺はティアの答えを待ったが、答えは長いこと返ってこなかった。

まだ、俺が助けたことに疑念を抱いているのか?
だから、いつまでも黙っているのだろうか。

こうしているうちにもチャリは進んでいる。
ティアの出身の島と逆方向だったりしたら
それこそ面倒だ。

俺はチャリを漕ぐのをやめ、海の上で立ち止まった。

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