Law

□ep.19
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「あ、藍おはよう!」
「おはよう、ベポ。今日も良い天気ね」

翌朝の甲板にて――ベポと藍はばったり顔を合わせ、そのまま二人(?)で雑談に入る。

「うん、朝はいい天気だね。でもこれからどうなるかはわかんないよー、グランドラインだから。いきなり嵐がくるかもしれないし」

甲板から見る限りでは、今日の空はいつもより清々しいし海も穏やかで、とても心地好い
風がそよそよと吹いているというこの上ない"好天"に恵まれているのだが、やはりここは
グランドラインである。
ベポは、油断しないよう藍に注意を促した。

「そういえば、そうなんだったわね。なら、今のうちにお洗濯物干しちゃいましょうか」

藍がこちらに来てからも、これほど良い天気だったことは少ない。
それならこんな好機を逃すわけにはいかないし、藍は溜まりがちな洗濯を済ませて
しまうに限ると思い、そう提案する。
しかしベポが食いついたのは意外にも、洗濯そのものに関することではなかった。

「えっ、…藍が干すの? 干していいの?」

瞬間、驚いたようにそう聞いたベポの視線は、なんとなく藍の腹部の辺りを
きょろきょろと動いているようだ。
恐らく、藍の傷の具合を心配しているのだろう。
もちろんベポも、藍がローからクルーの仕事の手伝いを禁止されていたことは
知っているし、今この段階での反応としては当然のことである。

「ええ。昨日ようやく抜糸も済んだし、船長さんからの許可は頂いてるわ」

少し不安そうな表情を浮かべるベポを安心させるため、藍は珍しくも、にっこりと
大きな笑みを湛えながらそう言った。

「ほんと!? よかったね、おめでとう!」

するとベポは、途端にぱぁあっと顔を輝かせて藍の回復を喜ぶ。

「ふふ、ありがとう。これでやっと、みんなのお手伝いができるわ」

感情がわかりやすい素直な子は良いわね、とか思いながら藍は、自分より幾分も高い
ベポを見上げながら笑った。

「それじゃあ、これからは藍と一緒に仕事ができるんだね!」
「ええ…そうね。みんなの仕事について、いろいろ教えて頂けると助かるわ」
「もちろん、おれにまかせてよ!」

どん、と胸を張ってそこを叩くベポはやはり可愛くて、頼もしいわね、なんて言いながら
藍は、小さな子供を相手にしているかのような心持ちだった。



天候が崩れる心配ももちろんあったのだが結局、この日は一日中晴れ間が途切れることも
なく、ベポと藍はつなぎやらシーツやらがはためく甲板に寝転び、ぽかぽか陽気の中
並んで昼寝をしたのだった。







七日前の思い出がひとつ。

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