inzm!

□きみがすき!
1ページ/1ページ



「好きです、よ、よかったら付き合ってくださいっ!!」



朝、8時15分。
何の接点もないクラスメートの松風くんに
教室の片隅で告白されました。




『いや、あの…私あんまり松風くんのこと知らないし…』

というか…
急すぎて展開についていけない。

「俺のこと?…えっと、名前は松風天馬!好きな食べm『いやあのそうじゃなくて!』…??」

私にだって選ぶ権利はある。
好きな人だっている。隣のクラスの田中くん。


『私ね、松風くんとは付き合えない。』

「どうして?」

『え゛…ど、どうしてって…別に松風くんのこと好きな訳じゃないし…』

ちょっと言い過ぎたかな?と罪悪感に苛まれた私はそっと松風くんの顔を見る。
すると予想に反して彼はにこにこと笑っていた。

「なんだ、そんなことか!」

いやいや、そんなことって…。
フラれたのに満面の笑みって…。

「じゃあ、君が俺のことを好きになるように頑張るから!」

そう自信に満ちた顔で言い放った松風くんに、嫌な予感しかしなかった。



放課後。
部活を終えた私は帰路につくことにした。

疲れた身体を引きずり、
なんとか昇降口に達した私は徐に指をローファーに引っ掛け中に足を滑り込ませた。

矢先、

「あ、蘭紀!」

大音量で聞こえたその声は、
疲れた原因の半分を占める元凶の松風くんのもの。


「一緒に帰ろう!」

まさかと思っていた言葉に不意をつかれ、ハッと顔を上げるとそこに居たのは

おそらく部活後に水道で顔を洗ったんだろうと思われる、水の滴る松風くん。

何故だか分からないけれど

咄嗟に目を反らしてしまった私は…





滴る水、静まれ心臓。
(面食いじゃないけれど)
(驚くくらい今の君に惹かれてる。)
(君には言ってあげないけどね、)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ