inzm!
□きみがすき!
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「好きです、よ、よかったら付き合ってくださいっ!!」
朝、8時15分。
何の接点もないクラスメートの松風くんに
教室の片隅で告白されました。
『いや、あの…私あんまり松風くんのこと知らないし…』
というか…
急すぎて展開についていけない。
「俺のこと?…えっと、名前は松風天馬!好きな食べm『いやあのそうじゃなくて!』…??」
私にだって選ぶ権利はある。
好きな人だっている。隣のクラスの田中くん。
『私ね、松風くんとは付き合えない。』
「どうして?」
『え゛…ど、どうしてって…別に松風くんのこと好きな訳じゃないし…』
ちょっと言い過ぎたかな?と罪悪感に苛まれた私はそっと松風くんの顔を見る。
すると予想に反して彼はにこにこと笑っていた。
「なんだ、そんなことか!」
いやいや、そんなことって…。
フラれたのに満面の笑みって…。
「じゃあ、君が俺のことを好きになるように頑張るから!」
そう自信に満ちた顔で言い放った松風くんに、嫌な予感しかしなかった。
放課後。
部活を終えた私は帰路につくことにした。
疲れた身体を引きずり、
なんとか昇降口に達した私は徐に指をローファーに引っ掛け中に足を滑り込ませた。
矢先、
「あ、蘭紀!」
大音量で聞こえたその声は、
疲れた原因の半分を占める元凶の松風くんのもの。
「一緒に帰ろう!」
まさかと思っていた言葉に不意をつかれ、ハッと顔を上げるとそこに居たのは
おそらく部活後に水道で顔を洗ったんだろうと思われる、水の滴る松風くん。
何故だか分からないけれど
咄嗟に目を反らしてしまった私は…
滴る水、静まれ心臓。
(面食いじゃないけれど)
(驚くくらい今の君に惹かれてる。)
(君には言ってあげないけどね、)