inzm!
□もういちど、
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大好きだった。
その気持ちは中学生の時からのもので、今となっては過去形である。
あの人と別れて5日が経った今、明日に迫っている手術のことを遥かに上回って凡そ90%程度はあの人のことで頭がいっぱいだ。
自分でも笑えるぐらいにあの人…ヒロトに溺れていたんだなぁと今になってやっと気付かされる。
ヒロトは私にとって、希望そのものだった。
いつもキラキラと輝いていて、私には手の届かない眩しい存在であったことは確かだ。
そんな彼はある日、私の想いを知ってか知らずか、私に告白をしたのだ。
彼は人気があるし、私なんかよりいい人なんて沢山いたのに。
彼は敢えて私を選んでくれたのだ。
そんなヒロトを、私は5日前に突き放してしまった。
私はそれを思い出す度に罪悪感に苛まれるのだが、そんなことは言ってられない。
死ぬか生きるか保障も出来ない私の、これからも再発する可能性のある私の傍に、あの人を縛りつけておく訳にはいかない。
あの人には私と違って未来がある。
『今までありがとう、もう貴方とは付き合えない。』
私にはこの言葉を言うことが精一杯だった。
叶うなら
もう一度会いたいと願う私は
きっと我が儘なんだろう。
………………
……………
…………
………
…
未だ焦点がはっきりと合わず、虚ろな目で目の前の蛍光灯を見つめる。
どうやら私は一命をとりとめたらしい。
窓から入る、耳に優しい風の音にふわふわと意識を漂わせていると、私の視界に綺麗な赤色がぼんやりと映った。
「…俺と、付き合ってください。」
私の視界の隅でふわりと微笑んだヒロトは、あの時と同じ台詞で私に告白をした。
私はただ、涙を流して頷くことしか出来なかった。
繰り返す愛しさ
(そうして私もまた)
(あの時と同じように)
(貴方に微笑みを返すの。)