pkmn!
□相思相愛。
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ちゃぽん、という音を立て、ゆっくりとお湯から腕を出す。
湯船の縁に頬杖をつくと、茹だったようにほんのり赤く色付く自分の腕から、ふわふわと湯気が漂うのが視界に入った。
やわらかな温かさに身を委ね、今日起きた出来事をぼんやりと思い出す。
「オレ、ハルカのこと好きかもしれない!」
恐らく、恋も愛も分からないであろうサトシに、まさかそんなことを言われる訳がないと思っていた私は当然目を限界まで開き、驚いた。
彼は私の答えも聞かず、さっさとグライガーの特訓に森へと消えてしまった。
私は残念ながらサトシにはこれっぽっちも興味がない、…いや、興味がないと言えば嘘になる。
何せ私達は長年競いあってきた仲。所詮ライバルというもの。
全てにおいて彼には負けたくない。嫌味なことに私と彼は相棒とするポケモンも一緒で、私のピカチュウと彼のピカチュウ、どちらが強いのかと聞かれたらやはりサトシのピカチュウなのだが、私は因みにそこにもまだ納得がいかない。
そういえばサトシは、いつもピカチュウを肩に乗せているが、もし、もしも彼に恋人というものが出来たとしたら、デートの際もああして乗せたまま行動するのだろうか。
…いや
、そんなことはどうでもいい。
そんなことより、彼はもう次のジムに行ってしまったんだろうか。
…いつもそうだ。いつもサトシは私を置いて、先へ先へと行ってしまう。
…って、いつから私は貴方の背中を追うようになったんだろう。
…ふと、『あ、』と短く吃驚したような声が自分の口から発せられた。
そういえば…、と記憶を辿ればいつも私の頭の中は彼のことばかりで。
…あ、そうか。
もしかしたら、私はもう既に…。
彼が私に好意を寄せるより先に
自分が彼に夢中になっていたことに気付かされ
少しばかり悔しさが芽生えた。
赤らむ頬は
逆上せたせい。
(告白するのは癪だから)
(いきなりキスでも)
(してやろうかしら。)