pkmn!
□簡単なこと、
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サトシとアイリスは
何だかんだ仲がいい。
幼さの残る二人がきゃっきゃと騒ぐ様を見ていると、とても和やかな気分になる。
…だが、困ったことが1つ。
「…いい天気だね、ハルカ」
『…そうだね、デント』
「……」
『……』
二人がきゃっきゃと騒いでいるということは、即ち同時にこの気まずい空間が出来上がってしまうという訳で。
『あ…はは、ちょっと向こうでお水汲んでくるね!』
「水なら、さっきサトシが汲んできてくれたみたいだよ。」
『…そ、そうだったんだ、あはは。』
私はどうもこの時間が苦手で、毎回何かと理由をつけてはその場から逃避するのだが、今回ばかりは神にすら見放されたようだ。ちくしょうサトシめ。
私が次の言葉に躓いていると、急に己の膝を見つめたままのデントがぽつりと言葉を紡いだ。
「…ハルカはさ、僕といるよりサトシと一緒の方が楽しそうだよね。」
『え、…そうか、な?』
意識したことはなかったけれど、言われてみればそう見えるのかも知れない。
私はデントといる時間が
嫌いな訳ではない。
ただ、なんというか…
言葉がつっかえてしまうのだ。
勿論返答に困った
私は
それ以上何も喋れずにいた。
「ハルカは…サトシが好きなの?」
動いてくれない口をどうにか動かして、やっと言葉を紡ごうと口を開いた刹那。
未だ目線を己の膝に落としたままの彼が、呟くように言った。
『ち、違うよ!全然!』
開いた口から堰を切ったように流れ出る言葉は、どれも動揺の色を含んだ否定の言葉で。
どうしてそんなことを聞くのか、だとしたら何だというのか…
言いたい事は沢山あるのに、
口から溢れるのは音のない声、つまりは空気ばかりで。
「じゃあ…僕のこと、
どう思ってる…?」
ちらりと私に視線をやり、反応を待つデントの頬は心なしかほんのり赤い。
…なんと返せばいいのやら。
彼の優しいところはとても好き。いつも笑顔を向けてくれて、ほんとは嬉しいのだけれど。
彼の前だと、何故だか上手く言葉が並べられない。
嫌いなところは?と聞かれても答えられないところあたり、私は彼を満更でもないと感じているに違いないのだ。
けれど、…けれど…、
このよく解らない
ふわふわとした感情を
うまく表現する言葉は…
『…好き、』
この言葉が一番適しているのだ、と
ぼんやり気付いたときには
私の唇は感情の滴るそれを、既にぽつりと溢していたのだ。
簡単なこと、
(私が探してた感情は)
(すぐ側に落ちてたの)