pkmn!
□雨音にキミを重ねる
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『コーン、遊びに来たよ!!』
そう言ってジムに駆け込んできた君は、晴天にも関わらず全身ずぶ濡れだった。
「いらっしゃい、ハルカ。…来るなら連絡くらい入れてください、全く。このコーンが留守番していたから良かったものの…三人共いなかったらどうするつもりだったんです!…ほら、そんな格好では風邪をひきますよ。」
『あはは、ごめんね。』
ジムの隅の方に無造作に積み上げられた、普段は汗を拭う為の真っ白いタオルを彼女に手渡す。
「その様子だと…そちらは今日も雨なんですね。」
『うん、相変わらず。サンヨウシティはいいね、気持ちいいくらいに晴れてて。セッカは湿気も多いし、いつも髪の毛がうまく決まらないの。…この際サンヨウに引っ越してきちゃおうかな?』
「…え、」
己の指で髪先を解かしながら、気まぐれに言い放ったハルカの言葉に僕の心臓はどきりと跳ねた。
『だって、ここに住んじゃえばコーンもポッドもデントもいるもん、いつでも美味しいご飯が食べられるじゃない!』
まぁ冗談だけどね、とイタズラに笑う君に、口から出かかった言葉が詰まる。
危うく“残念です”等と口走りそうになった僕
は、心底自分に呆れた。
それだけ僕は彼女に溺れているのだろう。
気付けば自分では計り知れないほど彼女の言葉に一喜一憂している自分がいた。
どれだけ君を想ったって僕の想いが彼女に届く事など無いというのに。
自分の愚かしさに改めて気付かされる。
『ねぇ、それより…』
君がそわそわと頬を赤らめながら口を開いた。
『デントは…どこにいるの?』
僕の脳に直接ゆっくりと語りかけるかのように、ハルカの言葉がじわじわと僕を攻める。
「…ああ、デントならジムリーダーの会議に、ライモンシティへ行っているはずです。」
僕が答えるや否やサッと立ち上がり、『ちょっと行ってくるね!』と足早にサンヨウジムを後にするハルカの背中を、ぼんやり見つめた。
勿論、彼女が振り返ることなど無いのだけれど。
『わたしね、実はデントが好きなの。』
数日前に知ってしまった事実が軽くフラッシュバックし、僕に目眩を起こした。
君が去った後のサンヨウシティには、時を見計らったかのように騒がしく雨が降りだした。
雨音にキミを重ねる
(いっそのこと)
(僕の儚い想いごと)
(洗い流してください、)