獣達の短い恋物語
□繋がれた手
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誰もいないはずの学校。
なのに足音が校舎を徘徊していた。
「…はぁ…はぁ……!」
女生徒はその音から逃げている。
クラスで話題となっていた怪談話を信じられなくて、真相を確かめようと学校に忍び込んだのが全ての過ちだった。
「ハァ、はぁ…誰か…助けてよ!」
―――…カツーン
後ろから追ってくる足音。
―――…カツーン、カツーン
テンポがゆっくりなのに、早く走っても離すことができない。
それどころかだんだんと近づいてくるように思える。
――…カツーン、カツーン
音が響く。
廊下の壁に反響して女生徒の耳に届く。
その度に女生徒へ来るのではなかったという後悔が襲う。
――…カツーン
「きゃあっ!」
不意に後ろから聞こえていた足音が前の曲がり角から聞こえる。
「…やだ…やめてよ……こないで…」
歯の根音が噛み合わない。
――…カツ、カツ
闇が広がる曲がり角。
そこからは生徒用の上履きが出てきた。
しかし、白い上履きは何故か血に濡れたように赤黒い染みが。
「…来ないで…来ないでよ!いやぁあぁあ!!」
―――…カツ
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