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□わがまま女に振り回される
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休み時間、
なんとなくそろそろくる頃かと教室の入り口に目を向けると、
案の定とでも言うか…
うつ向いたままの状態で手招いている幼なじみ。
こっちに来いの意味。
どうせあの俯いた顔は見れたもんじゃないほど不細工なことになっているんだろう。

「何、名無しさん。そんなに下向いて首ダルくないの?」
幼なじみは無言でうなずくと、俺のセーターの裾を握った。
昔からの癖。
例えば親に怒られたとき
恥ずかしいとき、寂しいとき
本人が気づいているかは分からないけれど、こんなことで感情を表す。
少し前までこの手が頼るのは俺の裾ではなかった。
俺は掴まれる悠太を羨ましいとずっと思っていながらも、名無しさんのその選択は当然だとも思っていた。
俺にとっても悠太は自慢の兄だから。

「名無しさん、そんな顔してたら俺がいじめたみたいでしょ。どうしたの」
聞かなくたってまぁ大体の理由は検討ついてしまうのだけど。
そして名無しさんも俺が何でもわかってくれるなんて思ってるもんだからいちいち言葉にはしない。
わかりたくない。

「見てられないって?」
なら見なきゃいいのに…
とは言えなかったけど、そう思う気持ちはよくわかる。
俺だってとられた気分なのだから
「隣は特等席なのに…」
「悠太の隣は俺のでしょう」
「予想だにしなかった展開についてけないよ、」
俺を盾にして、ぐずぐずの顔をあげる。
「酷い顔、口とがってますよ。」
「だから隠してるんだ、よ。」
「その顔千鶴辺りにも見せてきたら?」
「千鶴なら清々しいくらい笑ってくれるだろね」

泣き腫らした目元は赤くなって、そんな顔で笑ったって全然可愛くはない。
可愛くはないけど、そう言いながら俺の側を離れない名無しさんに、口元が緩みそうになった。
弱さを見せれるのが俺だけなのか、
みせても構わないのが、俺だけなのか…
できれば前者であってほしいけど、今は長年待ち続けたチャンスにかけたくなった。
「屋上いこ」
「やだ。」
「やだ。」
「やだって。」
「やだ。」
「…祐希、やだよ」
「俺だってやだよ、そんな不細工な顔した人に盾にされるの」
「くそぅ…言うなよ」

しぶしぶ従う名無しさんの腕を引いて階段を上る
まるで目隠しでもしてるように顔を隠しながら歩く姿に意地悪したくなった。
これ以上追い詰めるとへそを曲げて口を利かなくなりそうだからしないけど。





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