テニプリ童話劇場

□シンデレラ〜氷帝編〜
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一方お城では。

「王子様っ、シャンパンはいかがです?」
「私の方が先よ!
王子様、パスタの盛り合わせをお持ちしましたわよっ!」
「ちょっと、王子の前でそんなことを仰るの?本当、一目で田舎者だとわかりますわねぇっ!」
「貴女こそ、そんなことを言うものでは無いのではなくって?」

女達の壮絶なバトルが。

・・・そして。


「・・・なぁ」
「なんだ」
「なんで俺がこんなことせなあかんねん」
「仕方ねぇだろ、配役だ」
「せやかて普通はこれお前の役やろ」
「俺様はキングだ。なぁ樺地?」
「ウス」
「王子様はあかんの?」
「あぁ」
「全く、こいつはこんな時にやらんでいつやんねんほんまこいつは」
「文句言うんじゃねぇよ、アーン?」
「・・・はぁ、しゃあないか」

王座に踏ん反り返って座る泣きボクロがチャームポイントの王様、その横に寡黙そうな鈍色の巨体。
そして、眼鏡をかけた物静かそうな王子様。

「跡部」
「ここでは俺はお前のお父様だ」
「お父様」
「なんだ忍足」
「俺もここではお前の息子なんやけど」
「ちっ・・・なんだ侑士」
「さっきから女共がぴぃぴぃ煩いねんけど」
「仕方ねぇだろ。お前がさっさと婚約者決めねぇからこうやって舞踏会まで開いて結婚相手探してんじゃねぇか。文句言うな」
「俺かて頼んだ訳やあらへん」
「お前に早く結婚してもらわねぇと、王である俺が困るんだよ」
「知らんわそんなこと・・・」
「ったく、お前って奴は・・・」

舞踏会に対してとてもモチベーションの低い王子を見て、嘆息する王様。

「あと・・・いや、お父様、ちょっと外の空気吸ってくるわ」
「ああ、そのまま逃げ出したりすんじゃねぇぞ」
「わかっとるがな」

王子は、人波をかき分けて外へ出ようとしました。

すると、王子の目に、外から慌ただしく走ってくる人影が写り込んできました。

「うわ、どうしよ、もう始まってるよ当たり前だけどっ!」

どんっ

「うわっ!?」
「はわわっ!!」

自分よりも小さく、ひょこひょこと走るその人影は、王子がいることに気づかずそのままぶつかり、尻もちをついてしまいました。

「ちょお自分、どこ見て走っとん・・・」

王子が怪訝そうな顔をしながらその人影を見てみると・・・

「いった・・・!
あーもう、なんでいっつもこんなことばっかりしちゃうの私はー・・・あ、ごめんなさい!痛かったですよね?」

そこには円な瞳に涙を浮かべ、ドレスでいるにもかかわらず、平気でお尻をさすりながらこの王子に謝るという、明らかに周りのご令嬢達とは違う女の子がいました。

周りのご令嬢やその両親・・・その場に居たほとんどの人が、その女の子のことをとんでもない失態を起こした無礼な田舎娘だと思いましたが、そのとき、その子を見た瞬間、王子は周りとは違うオーラを感じました。




昔から王子の周りには、躾けの行き届いた、一般的に良い子だ良い娘だと呼ばれている女の子しか居ませんでした。

王子は容姿端麗で頭脳明晰であったため女の子に不自由したことは一度もありませんでしたが、同時にとても退屈でした。


『なんで俺の周りには、おんなじ様な女しかいいひんのやろ』


いつも笑ってて、自分の言う事を文句一つ言わずにやってくれる。
はたから見れば、素直で従順な良くできた女の子でしたが、腹の中では自分が王子の妃になって、将来的に遊んで暮らすことしか考えていない。そんな女の子ばかりだったからです。

王子は年を重ね、成長していくごとにそう思うようになっていきました。

そして、最近では自分によってくる女の子には全く興味を持たなくなってしまいました。
そのせいで王様が苦労をしているのですが・・・。

ですが、そうだとはいっても、一応王子にも「理想の女の子像」というものがありました。

その理想は至極簡単。

自分が王子であるということをほとんど気にしない人。

それが王子の理想でした。

でもそんな立場の人ですから、自分が王子様であることを気にしない人なんて出会えるはずかありませんし、王子も諦めていました。

ところが、この女の子はどうでしょう。

彼女も、彼がこの国の王子のだということは知っているでしょう。

ですが、出会った瞬間へこへこして気に入られようとするのではなく、そんなそぶりを一切見せない上、王子にぶつかったのに普通に謝ったのです。

これは、王子にとってとても新鮮で、なにより興味をそそられました。

そして、そう感じるや否や王子は目の前に座り込む少女に手を差し伸べました。

「自分」
「え?」


「俺と、踊ってくれへん?」


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