長編

□俺と君とが歩く道 9
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半分デートなお買い物の翌日、俺は待ち合わせのために校門に向かっとった。

日曜日やさかい、朝から人なんて歩いてへんし、学校の前やから尚更や。

朝特有の澄んだ空気が気持ちええ。


そして、


「忍足おはようっ!」



いつもの可愛え声が、俺の耳に届く。


「おはようさん。忘れ物とかしとらんか?」
「昨日の夜と、今日朝起きたときと、それと家を出る前に確認したから大丈夫!」
「随分多いなぁ」
「え、これくらい普通じゃないの?」
「まぁ・・・・優恵ちゃんはそれくらいやった方がええかもな」
「それってどういうこと?」
「そのまんまの意味や」
「忍足のいじわる」
「岳人に比べたらかわええもんや」


あ、膨れてそっぽ向いてしもた。


「ほれ、優恵ちゃん」
「・・・・」
「チョコ、食べるか?」
「・・・・食べる」
「ほんなら、こっち向いて」
「・・・・」
「向いて下さい」
「向いてしんぜよう」


にっこにこ。


なんや、優恵ちゃん笑っとるやん。



「自分もつくづく現金な子やなぁ」
「食べ物は別なのーっ」
「それを現金っちゅーんや」


そんなことないよーなんて言うて、くすくす笑う。

あー、俺今ホンマに幸せや。
なんてったって、大好きな子と二日連続でお出かけやからな。


まぁ今日は、


「あ、跡部だ。おはよう!」
「おう。早いじゃねぇのお前ら」


要らんオマケも付いとるけどな。


「おはようさん。なんや、お前も随分早いやん」
「人を待たせるのは好きじゃねぇんだよ」
「てっきり重役出勤かと」
「どう言う意味だ忍足」


まぁいいというかの様に溜息をつく跡部。
俺と優恵ちゃんを、車に乗るよう促してきた。
こういうとこ、さすが跡部やなっていっつも思う。

しかも車もあれやで、黒塗りのリムジン。
俺も一応男の子やし、こういう車とか見ると嫌でもテンション上がってまうわ。



「わーっ、すごっ、わ、忍足すごっこれ跡部っ」
「整理してから喋ったらどないや」
「リムジンすごい」
「はいよくできました。あめちゃん食うか?」
「食べる!って、私朝からいっぱいお菓子もらってるよね。餌付け?」
「気のせいやない?」
「いい加減にしろお前ら。
ミカエル、出してくれ」


俺よりもテンションが高い優恵ちゃんをなだめつつ、跡部と今日の確認をする。

とりあえず今日は、立海に行ってあちらさんのテニス部と来週の練習試合の打ち合わせをして、出来るなら相手選手の観察もしつつ、学校へ帰還。


「で、今回は正レギュラーと準レギュラーが参加…と、これでええ?」
「あぁ。優恵には臨時マネージャーを頼もうと思う」
「任せといて!」


やる気満々。なんちゅーかこう、ホンマに好きなんやな、こういうこと。
人をサポートしたりとか、誰かの役に立つこととか。


「そうだ。跡部、お菓子食べる?」
「菓子だ?まだ朝だろうが」
「優恵ちゃん、跡部に食べさせるのに頑張って選んだんやで」
「そうなのか」
「うん、社会勉強」
「こんなのでなるわけねぇだろ」
「まぁまぁ、騙されたと思ってお食べなさいな」
「ったく…」


優恵ちゃんの押しに折れた跡部が、差し出されたポッキーを受け取り、食べ始める。


「どうどう?」
「普通にうまい。つーかお前ら、俺様がポッキー食ったことないとか思ってるのか?」
「むしろ食ったことあるんか」
「ジローが寄越す」
「なるほどな」


確かに、あいつも例に漏れずモテモテやさかい、ポッキーもっさりもらったりしてそうやし。
食いきれんくなって跡部にやるとか、ジローらしいわ。


「じゃ、じゃあこっちは」
「まだあんのか」
「うまい棒」
「寄越せ」


うまい棒(コーンポタージュ味)はどうやら跡部のハートを掴んだらしい。


丸々一本を恵方巻き食いしようとして粉まみれになりかける跡部を見かねて、優恵ちゃんのうまい棒割り講座が開講されとった。


ちなみにその割り方は至って簡単。
うまい棒を両手の指で持って、そのままパンッと割る。

これがな、なかなか良えんや。
跡部も無駄に感動しとる。


「これが、庶民の知恵というやつか…確かに食いやすい」
「でしょ?
これならちびっこでも食べやすいしね」
「跡部はうまい棒気に入ったみたいやな」
「ほかの味はねぇのか」
「いっぱいあるよ!」


ノリノリやん。

あーあ。遠足じゃねぇんだぞ、なんて言っとったの、誰やったっけ。
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