長編

□俺と君とが歩く道 4
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あー、言ってもうた。
優恵ちゃんを水族館に誘ってもうた。

とか言うても、学校行事やねんけど。そこが残念なとこやなぁ。

俺がテンション上がって鼻歌歌っとったら岳人に、

「うわ、侑士きめぇ」

って言われた。
なんや地味に傷つくわぁ・・・。


今な、今日の部活の準備しとんねん。

跡部が「たまには平部員達を手伝ってやれ」とか言うてきてなぁ?
自分はなーんにもやってへんくせにや。

まぁ、生徒会長の仕事が大変らしく中々最近部活出れてへんから、平部員達に刺激を与える為にこうやって俺らに手伝わせとるんやろな。

そこは流石跡部やなぁって感じや。

それに、俺は機嫌がめっさ良えさかい、今日のところは許したるわ。

この後試合もあるけど、そっちも頑張ってやるとしよか。

あーあ、早う当日にならへんかなぁ?




・・・って思っとった。
当日がくるまでは、な。

もちろん、ものごっつ楽しみやったんやで?

その日は現地集合でな、いつもやったら5分前に着いとるとこ、15分前に着くぐらいやったんや。

で、10分前ぐらいに遠くに集合場所探しとる優恵ちゃんが見えて、名前呼んだら笑顔でぶんぶん手振りながら走って来てくれて。

それから、よう時間に間に合うたなぁとか、寝坊せんかったんやなぁとか、ちょこちょこ優恵ちゃんからかって遊んでたんや。
大体5分ぐらいやな。


こっからなんや、俺の今日一番のがっかりポイントは。


「おっ、ゆうしーっ!!!」
「あ、忍足見えたCー!」
「ったく、あんまり騒いでると激ダサだぜ二人とも」
「まぁまぁ、良いじゃないですか宍戸さんっ。
楽しい遠足の日なんですから、ちょっとくらい許してあげましょうよ」
「はぁ・・・みなさん落ち着いてください、恥ずかしいです」
「別に大丈夫だって、周りも大分煩いし、俺たちあんまり目立ってないから」

・・・なんや、ずいぶんと聞き慣れた騒がしい声が聞こえて来たなぁ。

・・・ま、まさかな。
テニス部レギュラーの殆ど(今のはレギュラー落ちしたのも居たけど)が水族館に来るわけあらへんよな・・・。

「よっ、侑士!・・・お前どうしたんだよ、そんなに暗い顔してよ」
「優恵ちゃんだー!おはよっ!」
「あ、ジロー達も水族館なの?」
「うんうん、俺今年で3回目だから水族館皆勤賞だCー☆」

ばちっとウインクするジロー。

ほんま、なんでこういうときは元気良えんやろかこいつは。
早う寝てまえっちゅーに。

「長太郎が水族館初めてらしいからな、着いて来てやったんだよ」
「俺は今度皆さんで行くときとかで良いって言ったんですけど、宍戸さんが『せっかく跡部がタダて連れてってくれるんだからよ、それに便乗しようぜ』って言うもんですから・・・」
「主婦かお前はっちゅーかなんでお前らは揃いも揃って水族館来とんねん。
普通はもっとばらけるもんやろが」
「それがね、みんなたまたま希望先が水族館だったんだよ」

因みに俺も、と滝がいつもの滝スマイルで言う。
こいつ、レギュラー落ちしてもモッテモテなんやろな。

「俺は跡部さんに無理矢理・・・」

ぴくっ

俺の耳が「跡部」と言う名前に反応する。

「なんや、跡部も来とんのか」
「はい、でも生徒会長は見回りしなきゃいけないとか言ってたので、合流は大分先だと思いますけど」


・・・せっかく優恵ちゃんを独り占め出来ると思とったんに・・・!

しかも優恵ちゃんは可愛い後輩・・・もとい日吉の登場に、

「若っ、キャラメル買ってあげよっか、青いやつ」
「遠慮します。っていうかそんな色の物食べたくありません」
「えー、若で食べられるものなのか実験してから食べようと思ったのにー」

日吉いじりを楽しみはじめたわ。

っちゅーかマジであるんか青いキャラメル。

「あるよ。俺前売店で見たし」
「勝手に人の心読むな、滝」

「思ったのにーじゃないです!っていうかそんなことは自分でやってくださいよ、先輩、食べるの好きじゃないですか」
「若のけちーっ。
いーもん、忍足優しいから食べてもらうもんっ。
ねー忍足?」

お、おおきになぁ日吉、ナイスパスご馳走さん。

「ん、ええよ?俺は日吉と違うて優しいからなぁ?」

ちょっと意地悪く口角を上げて日吉に笑いかける。
俺のことを軽く睨んで来る日吉。

人のこと睨む前に、まずはそのツンデレを直すことやな。


そんな感じで始まった遠足。

さっきはごっつ空気やったけど、当たり前に周りには沢山の生徒。

俺らテニス部は嫌でも人を集めてまう。

優恵ちゃんと二人で歩くのは難しそうやけど、頑張ってみよかな。
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