オリジナル

□red
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キーンコーン・カーンコーン



学校の終わりを告げるチャイム

世界は超格差社会へと変貌を遂げていた

義務教育だったはずの小・中学校は今やそれなりのお金持ちでしか通えないものと化していた

お金持ちと言っても少し前年号が平成だった頃でいうごく普通の家庭である

普通の家庭がお金持ちと言われる由縁は一般人立ち入り禁止区画ができたからだ

そこのは貧しく食べることすらままならない人たちが住んでいる

今や人工の5分の1は立ち入り禁止区画の人間だろうと言われている


そんな時代で学校に通えている僕は幸せな人間なのかも知れない



「颯人、また明日な!」

「ああ」


だからといって立派な夢があるわけでもなしに、毎日ただ何となく過ごしている


俺はいわゆる無気力系男子なのだとか


とにかくそんななかで僕はただ何となく平凡な生活のなかを生きている


例え僕たちの暮らしのすぐ側で他人がどんなにひどい目にあっていたとしても所詮他人事なのだ


僕にはどうしようもない







「お兄さん、これ買って?」

「ん?」


今時珍しくもない売り子
別名寝子

売っているもののほとんどが自分の身体だと言うことから付けられた呼びなだ

しかし、その少女が持っていたものは

「カード?」

「うん、買って?」



見たことも無いカードだった
銀のカードにまるで血が垂れたような赤い模様


「なにそれ・・・deadcurd?」

「うん!1000円でいいよ!買って!」


正直そんな得体の知れないカードなどほしくもなんともないが
僕にとっての1000円の価値は2日食費を少し質素なものにすればいいか、程度だが
彼女にとっての1000円とは一ヶ月ご飯が食べれるであろう大金


「いいよ、買ってやる」

「やったー!」


2日ご飯が100円のパンになるくらいの金でこの子の一ヶ月が保証されるならまあいいか

これが僕にできる最大限の人助けである




「ありがとうお兄さん!」

嬉しさからほんのり頬を赤く染め満面の笑みを浮かべる少女はとても愛らしく
少しだけいいことをした気分になった


「どういたしまして」





今から15年前、突然できた立ち入り禁止区域

表向きは隕石が落下したと、あまりにも被害が大きく手だしできなくなったと発表された


しかし多くの国民は信じていなかった


そんなかで最も有力な噂は、感染症

危険なウィルスが発見されたのだと

この噂がたった原因は、立ち入り禁止区域から一般区画にこれる人間は限られている事が大きな一因だ

行き来するにはゲートを通らなければならないが、通れるのは寝子に登録済みの人間だけだ
寝子になるには膨大な検査を受けなければならない


そこまでしてでも寝子にならざるを得ないのだ

売り子になれるのは18歳以下の少年少女のみ



禁止区域は4つのブロックに分かれている
スペード、クラブ、ダイヤ、ハート
寝子はこの4ブロックのどこかに所属している
鎖骨のあたりにペイントを入れることが義務づけられている

それぞれ寝子の利益をもとに暮らしている

禁止区画では寝子はとても大切にされる

しかし、一般区画では差別の対象にしかならない















「ただいまー」


僕の家は4人家族。父さんに母さん、それと妹。
どこにでもある家庭

「お帰り、兄さん」

妹の颯
兄の僕がいうのもなんだが、綺麗な顔立ちで、クール
喜怒哀楽が少し顔に出にくいが優しい子だ


そう、僕はこの何もかも普通の日常の中で普通に生き、普通に死ぬ

それが僕にとっての幸せである
 

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