短編
□The last thing you think
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―――時は5月。江戸から遠く離れた箱館の地を訪れたのは銀色の魂を持った男、坂田銀時。
白地に真っ赤な大輪の菊が描かれた着流しは、銀時の柔らかな銀髪と相俟(あいま)って、どことなく儚げな印象を与えている。
しばらく歩き、到着したのは小さなお寺。
ここには先の戊辰戦争終焉の地 五稜郭での戦いで亡くなった人物が埋葬されている。
数あるお墓を通り過ぎ、寺社の裏手にある細い道を進み、辿り着いたのは町がよく見える小高い丘の上。
そこには一つのお墓があった。
傍(そば)には、今まさに満開の大きな桜の木が一本。
銀時はそのお墓に刻まれている名前を愛おしそうにゆっくりなぞり、しゃがみ込んで持ってきたタバコとマヨネーズを添え、手を合わせる。
「………土方、元気にしてるか?…どうせお前のことだから、きっとあっちでもタバコばっか吸って何にでもマヨネーズぶっかけて食べてるんだろ?足りないんじゃないかと思って持って来てやったぜ。」
此処に眠っているのは真選組鬼の副長であり銀時の恋人でもあった男、土方十四郎。
真選組の副長として最期まで誇りを失わず、立派に戦い抜いたため、特別に見晴らしのいい此処(ここ)に埋葬されている。
「お前が俺の前からいなくなってもう1年経ったんだせ?本っ当に毎年毎年時が流れるのが早くなってくのな。もう銀さんの時間の流れる早さはジェット機並ですー。」
そこで銀時は一旦言葉を切り、懐から一枚の紙を取り出す。
所々血塗れていて、お世辞にも読みやすいとは言えない。
「絶対また顔見せるって約束したのはどこのどいつだよ。銀さんが見たのはこの俳句と骨だけなんだけど。」
銀時は苦笑し、持っている紙を風に遊ばせる。