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□こんな寒い日は
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はぁ、と息を吐くと白くなる。

蘭丸は自分の主である信長を想い、
ため息をついた。

いや、自分の恋人だ。

「信長さん・・・。早く会いたいです。」

そしてもう一度息を吐く。
また白くなり、宙に消えていった。

それを見て蘭丸は不安を覚える。

自分の恋人――信長は本当に心の底から自分を愛しているのだろうか。
何度も何度も『愛してる』と言われても心配にはなる。
事実、浮気をしていたことは何度か分かっていた。

「らぁんまる。」
「信長さん・・・。早く参りましょうか。」
「ああ。」

蘭丸の背後には信長の姿があった。
にこりと笑う信長の姿に蘭丸は目が釘付けになる。
一生、この笑顔を自分にだけ向けて欲しいと、
そんな叶わぬ欲まで沸いてきてしまう。

「今日は寒いな。」
「そうですね。」
「・・・やめるか、行くの。」
「え?」
「やめる。
 こんなに寒いと行く気にならない。
 お蘭。俺の家に来い。」

そう言って蘭丸に手をさしのべる。
だが、当の蘭丸はその手を取るか取らないかで悩んでいた。

「どうした?」
「いえ。僕がお邪魔したら迷惑になってしまうのでは・・・?」
「いいんだよ。というか迷惑になっても構わない。」
「・・・・・・・・・はい。」

手を取れば、信長がぎゅっと握る。
蘭丸もそれに応え握り返す。
先ほどまで冷たかった手がまるで嘘のように暖かくなる。

「信長さんの手、暖かいですね。」
「だろ?」
「はい。」

蘭丸が儚い笑みを浮かべる。
蘭丸は信長が喜んでるのも知らない。

「また、今日みたいなこんな寒い日が有りましたら
 手を握って下さいませんか?」
「いいよ。握ってあげる。」
「ありがとうございます。」

2人共少し頬が紅潮していた事には気付かない。

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