狂桜鬼伝 四

□優艶の表情
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新政府軍は欧州を目指し軍を進めつつあった。


会津 白河口では旧幕府軍が
攻める新政府軍を迎え撃ったが
新政府軍の援軍の影響で引くこととなった。


斎藤達がいる陣のもとから離れた私は
土方と千鶴とともに行動していた。




土方「・・百合、お前寝てなくていいのか?」


会津城内を歩いていると
土方が私の方を向いてそう言った。


『・・・あぁ。
私より土方の方が寝てた方がいいと思うが・・?』


土方「・・・俺は大丈夫だ。」


そう言って澄ました顔で足を進める。


・・・会津もいずれは戦場になる・・
そして・・次は・・・土方の命が・・


私はそう思って目を細める。


『・・・何も出来てない・・』


千鶴「え・・?」

歴史の流れに身を任せて只過ぎていくだけ・・

私の力じゃどうしようもなく
止まることなく過ぎていく。



まるで生き物のように。



ザッ


土方「・・・・・。」


後方を歩く私に土方は立ち止まった。


千鶴「・・・土方さん?」

・・・何だ?

立ち止まった土方に私も足を止める。


土方「・・・俺達は今から福良へと向かう。
・・・お前は・・どうする?」


・・・・。
聞かないんだな。
私が何故ここにいるのか・・。

それなのに何で分かりきってること聞くんだろ?


『行くに決まってるじゃん。
私は戻るよ、斎藤のもとへ・・』


土方「!!!!・・ふっ」


私の言葉に驚いた土方は
何故か悲しい表情を浮かべて笑った。


ザッ


そう言ってまた歩き始めてた土方。
そしてそれについていく千鶴。


どうして悲しい顔したんだろ・・
私、何か言ったかな・・?



ザァ


そのとき突然荒い風が吹き私の髪を揺らす。


(君が大好きだよ、百合ちゃん)


沖田の言葉が頭から離れない。
あの表情も冷めていく体温も
覚えてる。

忘れられない。
忘れることなんて出来ない。


死というものがこんなにも重く
心も身体も支配して・・



『息苦しい・・』


私は喉を押さえながら足を進めた。



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