あの夏の空に
□夕飯と反射
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山菜摘みから帰って来た後の千代とモモカンは恐かった。
笑顔の後ろに鬼がいたね…ゲンミツに。
でも、もっと大変だったのは廉の方だ。
目に涙を溜め無言でじーと私の顔を見て怒っていた。
見かねた花井と西広が助け舟を出してくれたお陰で難を逃れたが、
次に無茶をしたら頭を鷲掴みにするとモモカンに脅…約束させられた。
『モモカン恐かった…』
「自業自得だろ」
『うっ…』
「みんな奏ちゃんの事が心配だったんだよ」
「確かに倒れた時はビックリしたよ〜!」
「シガポの冷静な対応にも驚いたけどな」
「そーそー!俺なんて最初、俺がタックルした所為かと思ったんだからな!」
「そもそも急に人にタックルするのは良くないって、田島…」
「奏って体弱かったりするの?」
「っ奏は、昔からっ体弱くて、倒れたりしてた!」
「(ああ、だから三橋はあんなに怒ってたんだ)」
『体弱いって言っても自己管理すれば問題ない程度だから!』
「その自己管理が出来てなかったんだろ」
『…ごめんなさい』
「あー、つまり…もう無茶はすんなって事だよ!分かったか?」
『うん…』
「奏ちゃんもちゃんと反省した事だしご飯食べましょ!みんなお腹空いたでしょ」
「「「はい!」」」
「よっしゃー!バンメシ、バンメシ!!」
「俺もう腹ペコだよ〜」
「それじゃあいっただっき「ちょっと待った!」え、何で!?」
「夕飯を食べ始める前に聞いて欲しい事があるんだ。俺はスポーツに重要な脳内ホルモンは3つあると思ってるんだよね」
「?」
「脳内ホルモン…?」
シガポの話す3つの脳内ホルモンとはこうだ。
1つ目はチロトロピンで自分の将来に集中するためのホルモン。
きっと勝てる、きっとやれると自分への期待を高める時に生じるもの。
2つ目はホルチコトロピンで現在の事に集中しているホルモン。
練習でも試合でも目の前の事に集中してる時に生じるもの。
3つ目はドーパミンで過去に集中している時のホルモン。
その日あった事への充実感、勝ち試合の後の満足感を感じている時に生じるもの。
この3つのホルモンを活用する事で、明日のやる気に繋がり質の良い練習が出来るとシガポは考えていた。
しかし、そうは言っても脳は体と違って簡単に鍛えられるものではない。
そこでシガポの提案した簡単にこの3つのホルモンを活用する事。それは食事だ。
「これから毎日三度メシの時にこの3つのホルモンを意識的に活躍させる事で、
君らの脳は普段から3つのホルモンが活発に働く脳になる」
「えーっと、つまり集中力が増したり…?」
「やる気になったり?」
「そう!さァ、この合宿で君らの脳にメシを見るとホルモンが活発になるよう反射を作るよ!!」
「おお!」
『シガポ何か凄い!』
「全員食事を見て!」
シガポにそう言われ、改めて目の前に置かれたご飯を見る私たち。
出来立てのそれらは湯気が立っており、思わず唾を飲んでしまうくらい美味しそうである。
「(ゴクッ)」
「う、うまそう…」
「美味そう!」
「うまそ〜!」
「美味そう!」
「美味そう!!」
「「「美味そうっ!!」」」
「頂きます!」
「「「いっただきまーすっ!!!」」」
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