あの夏の空に

□新成野球部
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あの後、監督がジュースと称しグレープフルーツを素手で潰したのには驚いた。
その光景に、他の部員たちも顔を真っ青。


花井くんなんて、泣きながら渡されたジュースを飲んでたくらいだ。




「三橋…くん?」



「は、はいぃっ」



「ちょっとさ、投げてみない?」




「あ…」




『レン…?』





「お、俺も…ヤメときますっ」






「俺、泣かすような事言った…?」

「ううん」





「ち、違いま、す…投げても、意味ないからっ」


「何で?」





「球…遅い、から」


「んな、的外れな期待はしてないと思うけど…補欠だったの?」



「…ううん」



「何だ、レギュラー?どこ中?」





「み…三星…」


「三星?知らないや、知ってる?」


「知らないなぁ」





『そりゃあ、群馬だし』


「え?」




「もしかして群馬の三星学園かな?」




「…うん」





「おおー!」


「そういや三橋がそんな事言ってたな」


「外国人部隊だ!カッコイーっ!」



「ばっか、野球留学なわけないじゃん」



「でも、何で埼玉に?」

「転勤とか?」


「私立ならともかく県立だもんな…」




「えっ…あ、」

『あ、あのね!「ウッゼェな、もう!」花井くん…?』





「エースだったんだろ?チームで1番だったんだろ!?回りくどい自慢すんなっ!」





「ち、ちがっ」




「違くねェんだよ!」




「そ、そこに居ると…贔屓で…エースに、なっちゃう、から…」


『廉それは!』




「贔屓だァ?」

「いいなー、エース!俺も贔屓でいいからエースやりてェよ!」



「どうゆう事?」




「…うちの…じいちゃんの、が、…学校だから…」





「「「へェーっ!」」」






「経営者の孫だからってエースやらせるの?ひでェ学校だな」



「か、監督の所為じゃ、ないよ…お、俺…マウンド、3年間…譲らなかった
俺の所為で、みんな野球、楽しめなくて…俺の所為で負けて…俺の所為で、みんな野球嫌いになっちゃって…」





「お前、マジでウザイ…マウンド譲りたくないなんて、投手にとっては長所だよ」


「長、所…」




「ま、イヤな奴なのは確かだけど」


「うっ」





「でも、投手としてなら俺は好きだよ」


「す、き…」




『阿部くん…』








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