あの夏の空に
□新成野球部
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私は今、久々に廉がマウンドに立っているのを見ている。
中学を卒業してから一度も見た事のなかったその姿。
やっぱり私はマウンドに立つ廉が好きだ。
「なーなー！気になってたんだけど、お前ってアイツの彼女！？」
『私？違う違う、あれは私の双子の兄』
「へー、アイツって双子なんだ。似てないね」
『よく言われる』
「スゲー！双子なんだ！！俺、田島悠一郎！」
「泉孝介」
『三橋奏だよ、よろしく』
「奏！ゲンミツによろしく！！」
「もう名前呼び！？」
「だって三橋が２人居るんだからしょうがないだろ？」
『いいよ、奏で』
「じゃあ、俺も奏って呼んでいい？」
『うん』
「ねえ、悪いんだけど内野だけ入ってくれない？今から花井と３打席勝負するから」
「えー！ズリィ！！俺も俺も！！」
「た、田島はまた今度なっ！」
『花井くん、勝負するんだって？』
「ああっ！俺が野球部ヤメんのが気にくわねェらしい」
『そういう事じゃないと思うけど…まあ、頑張って！』
「三橋には悪いが打たせてもらうぜ」
『ふーん…（阿部くん次第かな？）』
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「３打席勝負…プレイ！」
廉と花井くんの勝負が始まった。
阿部くんはこの勝負で廉に自信をつけさせたいんだと思う。
レンはそれだけ凄いモノを持った投手なんだから…
『（アウトハイ…ボールか）』
「ストライクッ！」
「うわっ」
「何だよ見えてないじゃん！」
「バット、スゲー下だよ」
「ははっ、デカイの意識しすぎた」
「（アウトローにカーブ…）」
キンッ
「おっそっ」
「アウト！」
「（ショートゴロっ）」
『花井くん…目いいのかな？』
「（ここらでやっとくか…）」
「『（真中にまっすぐ…！）』」
「…っい！！」
『投げた！』
「（真中！振り切れっ！！）」
パンッ
「ストライク！」
「な…」
『廉、阿部くん…』
廉が怖がってた真中を投げた。
しかも、花井くんが空振り。
その後もリードする阿部くんと、リード通り投げるレン。
もしかすると、この２人なら本物のバッテリーに、
ううん…このチームなら廉が本当のエースになれるかもしれない
「こいつはこれからどんな打者でも打ち取る投手になるよ！
あとは打たせた球を取ってくれる野手と、１点入れてくれる打者さえ居れば…甲子園に行ける！！」
「「「…」」」
「む…むりです」
「「「「はァ！！？」」」」
「おい！行けるとは限らないけど、一応目指せよ！！」
「一応！？なんで！？俺はマジで行く気だけど！！？」
「む、むむむむりですっ！」
「無理とか言うなよ！！」
「野球を本当に楽しめるのは、本気で勝とうとしてる人間だけよ」
『監督…』
「私は勝ちたいの…やる前から無理無理言ってチームの士気を下げる人間にエースナンバー１番はあげない！」
「…む、むり、じゃないです」
「あんまりイライラさせると…ブツよ」
「ヒッ！！」
「今日から２週間は受験で鈍った体を鍛え直すとして、ゴールデンウィークは合宿します！
その仕上げに三星学園と練習試合しましょう！！」
『え”』
「いやだぁーーーっ！！！」
前途多難な高校野球生活が始まった…
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