手のひらを太陽に

□26,逃げ
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幸村くんたちと別れた私と村上くんは廊下を走っていた。
そして丸井くんも走る走る。



「追いかけてくんなーーッ!!」
「『じゃあ逃げるなーッ!!』」




その日、多くの生徒がアリスとピーターパンに追われている丸井くんの姿を目撃したと言う。



***



「はぁっ、はぁっ、何で追いかけてくるんだよっ!?」
「それは、丸井が、逃げるからだろっ?」
『もう疲れたっ』

「だいたいその格好なんだよっ!」
『アリスと』
「ピーターパン!」
「はぁ?」

『そんな事より丸井くん最近変だよ?』
「そうだよ!なんでうちのクラス来なくなったんだ?」
「そ、それは…」
「古沢が二階堂に赤いリボンを渡しているのを見たらしい」
「うわっ!!」
『っや、柳くん!?』
「ビックリしたっ」


『てか何で柳くんがいるの!?』
「お前達がなかなか帰って来ないから探してこいと古沢に言われた」
「それでわざわざその格好で…?」
「何か問題でもあるか?」
「「『…ありません』」」



突然現れた黒い人影は真っ黒の衣装に身を包んだ柳くんだった。
ただでさえ怪しい雰囲気のある柳がよりいっそう怪しく見える。
しかし、その格好が正装と思えるくらい柳くんに似合っていた。



「って!古沢リボン渡してたの!?」
『そうだったっ!丸井くんどうなの!?』
「…確かに赤いリボンを渡してるの見たぜ」
『あちゃー…』
「マジか…」
「二階堂も受け取ってたし…もう俺の出る幕なんてねェだろ」


「丸井…」
『でも、万里子がリボンを他の人に渡したからって丸井くんが諦めるのは可笑しいよ』
「日高の言う通りだ。丸井はこのまま何も言わずに終わらせていいのか?」
「お前等には悪いと思うけど…もうほっといてくれ」



丸井くんはそう言い残すとその場を去ってしまう。
私たちにはあんな顔をした丸井くんを再び追いかける事が出来なかった。



『丸井くんのあんな顔初めて見た…』
「そうとうショックだったんだな、丸井」



『でも、本当にこのままで良いのかな…』





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