手のひらを太陽に

□22,来年も、きっと
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ちょうど良く冷房の効いた車に揺られながら窓の外を眺めていた。
まだ激しい運動は駄目だが私生活をするにあたって問題はないと判断され、
ようやく退屈な入院生活を終えたのだ。
そして現在、ノブ兄さんの運転する車で自宅へ向かう途中。


思い返してみれば今年の夏は今まで生きてきた中でもっとも色々な事があったように思える。
テニス部の合宿の手伝いから始まり事故にあい入院生活。
テニスの大会で立海が全国優勝出来なかったのは残念だが、
試合を終え久々にお見舞に来た彼らの顔は今まで以上にイキイキしていた。



『はぁ…それに比べて私は中学最後の夏休みを入院生活で終わらせちゃった』
「あ、このちゃん。弦一郎が明日の夜開けといて欲しいって」
『はい?』




***


『何、これ…?』


目の前に広がる光景が理解出来なかった。
突然やって来た気品溢れるスーツの男性に浴衣を渡され、
あれよあれよと言う間に此処へ連れて来られた私とこーた。
そして着いた先に待っていたのは、色とりどりの提灯や何処からともなく聞こえてくる祭り囃子。
それに加えて目の前に広がるのは数々の出店たち。



「待ってたぜ日高」
『跡部くん…これはどう言う事?』
「アーン?見て分かるだろ祭だ」

「おまつり!」
「浩太郎祭は好きか?」
「ん!」



確かに跡部くんの言う通り目の前に広がるのはお祭りだ。
しかしその出店に立つの面々は紛れも無く見知った顔。



『いや、お祭りは分かるんだけどね?何で皆が出店にいるの??』
「それは俺様じゃなくてアイツらに聞きな」
『皆!!』


「日高久しいな」
『そんな久しぶりじゃないけどね…ところでこのお祭りどうしたの?』
「実は日高さんの退院祝に何かしたいって皆で話したんだ」
「色々考えた結果祭に誘おうと思ったんじゃ」
「先輩ずっと入院生活だったからお祭りとか行けてなかったでしょ?」
『そりゃあそうだけど…』


「ですがこの時期近くでお祭りをやっていなかったので跡部くんにご相談したんです」
「そしたら自分達で祭をすりゃいいだろって話しになったんだぜ!」
「場所とか店の準備とか殆ど跡部がしてくれたんだけどな」
「その話しを聞いた氷帝と青学も何かしたいと言うので参加する事になった」
「ここに居る全員、日高の退院を祝福している」
『みんな…』




見渡せばそこには優しい笑顔を向けてくれる彼らがいた。



「おかえり日高さん」
『ただいま!!』





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