NOVEL・SS

□裏返しの願いごと
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年甲斐もなくイベントに便乗したカカシが、笹を買って帰ってきた。
色紙に次々と細工を施し、飾り物を作り上げる器用な手先。
すっかり見物人と化していたサスケに、最後の仕上げとばかりにカカシは短冊を手渡した。



「サスケはお願いごと、なんて書く?」



満面の笑みを浮かべ、尋ねた言葉に返ってきた答えは…。



「復讐。」

「それ、星にかける願いじゃないよ。」



呆れ顔のカカシをよそに、サスケは渡された白い
短冊に、真っ黒なペンでその物騒な二文字を書いていく。




口元にはうすら笑い。




興奮した瞳は写輪眼。




体からはご丁寧に、鬼々迫るチャクラまでをも大放出。




そういえば今年の始めに初詣に行った時も、こんな姿を見た気がする…。
背中に冷たい汗を感じながら、カカシは新しい色紙を取り出した。



「あのさ、これには俺との未来を願って書いてくれない?」

「は?なんだそれ?」

「一緒に居られますようにとか、幸せになれますようにとか、そういうこと。」

「くだらねぇ。」



ピシャリと言い放ち、手渡された赤い紙をサスケは、
無造作にテーブルの上に放り投げた。
途端、『サスケ君、酷いよ』と大袈裟に嘆く上忍。
その手元に視線を落とし、サスケは露骨に眉を顰めた。




“サスケがずっと好きでいてくれますように"





目の前の青い短冊には、口説き文句のような願いが、
綺麗な文字で並んでいる。



「これを人目に晒す気か?」


「ウチの中で飾っておくだけだから、誰にも見られないでしょ。」



だから本心を書いてね、と期待に目を輝かせたカカシが、紙を押し戻す。
返事を待たずに、窓の隙間に差した笹に飾り付けを
始めて数分後、サスケが仏頂面で2枚の短冊を
カカシの鼻先に突き付けた。



「なによ。これ?何も書いてないじゃない。」

「アンタとの未来を願いたくねぇ。」



半分は予想していたものの、渡した赤い短冊は白紙のままでのご帰還だ。
逆に白い短冊に滲む、不吉な単語には新たに
赤い縁取りまで加えられていた。
がっくりと肩を落としながら、こよりを笹に
括りつけようとして、カカシはふと気が付いた。
クルリと翻った赤い短冊。その裏に…。



「サスケ、信じていいの?」



テーブルの上を片付けていたサスケの背中が、ピクリと揺れる。



「か、勘違いするな!ふ、復讐のことだよ!」

「あ。そうなの?」



所々吃りながら、否定するサスケの声が心地良い。
赤い色紙の裏には、裏写りした赤い文字。






"叶えてやる”






すっかり鼻の下を伸ばしながら、裏返しのまま
飾ったそれを、カカシはうっとりと見上げる。



そして『復讐』の文字が浮かぶ白い紙片を
忌々しげに横目で睨み、




まだ邪魔しないでよ、と指で弾いた。






【終】


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