NOVEL・SS

□無限ダイバー
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───やっぱりダメだったってばよ。





もう何度目のチャレンジだっただろうか。
またサスケの望む状態を維持出来なかったナルトは、激しく自分を責めていた。
つい先ほどの大失態を思い出しながら、失意のまま引き込まれるように暗い海の底へと沈んで行く。
遠ざかる水面を茫然と見上げていると、突然視界の中にサスケが舞い降りるように現れた。





(こんな役立たずなオレを追いかけて来てくれたんだろうか)





唇が触れる寸前までナルトに顔を近付け、見つめる瞳が「オレが欲しくないのか」と無言のうちに語りかける。
けれどそんな挑発的なサスケの行動を、ナルトは決して手放しで喜ぶことは出来ない。
ダメなのだ。
どんなに色っぽい瞳でサスケに誘われても、ダメなのだ。
自分の股間は全く反応を示してくれない。
そう、ナルトは若年性EDを患っていた。




一方、サスケはここまで露骨に迫っても、まだ萎えたままのナルトに焦れていた。
これではまるで自分に魅力がないと言われているようなものだ。
こんならしくもない大胆な行動に出ても、所詮ナルトの病気には敵わないのか…!
行き場のない悔しさが青く光るチャクラとなり、サスケの手に集まる。
その美しい光をぼんやりと見詰めながら、ナルトは千鳥で罰を受けるのだと思った。
それもこれも不甲斐ない己の息子の所為なのだ。
容赦のない攻撃をナルトは避けなかった。
サスケの怒りは尤もだから。
でも自分はEDなのだ。
悲しいくらいEDなのだ。
何がなんでも勃たないのだ。




サスケに一撃を浴びせられ、更に落ち込んだナルトはまた深い海の底へと落ちていく。
海中に聳え立つ意味不明な卒塔婆までもが、まるで勃たない自分を嘲笑うかのように思える。
或いはこれは愚息に対しての墓標なのだろうか。
もう心まで萎えてしまいそうになった時、海の底から何故かサクラが現れた。



「ナルト、勃つのよ!」



そんな腐女子…、いや医療忍者の願いとチャクラがこもった手が背中に触れる。
次に出て来たカカシは「このツボ、結構EDに効くんだよね」と、優しく指圧をしてくれた。



「サスケのココに突っ込むんだ!」



だからどこから湧いて出たのか、木ノ葉の仲間達が集団でナルトの尻を叩いて、ご丁寧に教えてくれた。




皆の温かい応援がナルトの心と股間を癒す。
そうだ。EDなんかに負けている場合じゃない!
やっと中心が熱く漲っていくのを感じたナルトは、一気に水面へと飛び出した。




今度こそサスケと一発…、いや一戦交えたい!
ナルトはフンドシの代わりに、額当てを締め直し、逃げてしまったサスケの姿を探した。
すると意外にもサスケは、まだ海面をゆらゆらと漂っているではないか。
しかも無駄に肌蹴た上着と無防備に広げた両手が、受け入れる準備は万端だとナルトに伝えてくれる。







今行くってばよ───っ!!








一方、自分に向かって急降下して来るナルトを見上げながら、サスケは僅かな期待を抱いていた。
ナルトは自信満々な様子だ。
だがどんなに猛々しく突進して来られても、股間までもが猛々しくなっているとは限らない。
事態を正確に見極める為、サスケは万華鏡写輪眼を発動させた。
ナルトの勃起状態を確かめるべく、中心に熱い視線を注ぐ。
しかしそれが仇となってしまった。




美しく開いた神々しいまでのサスケの瞳が、己れの股間に集中していることに
気付いたナルトは、俄かに緊張状態に陥った。
しっかり勃たせないと!という義務感に駆られれば駆られるほど、中心は萎えていく。
やはり自分はEDなのだ。
とことんEDなのだ。
何がなんでも勃ってはいられないのだ。




再び悲しみに捕らわれ萎えたナルトは、サスケの脇をすり抜け、また暗い海へと沈んでいった。






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