魔人探偵脳噛ネウロ2

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「へえ‥」

笹塚の眸が僅かに細められる。

「そう言えば笹塚さん、制服?」

普段とは違って濃紺の服を着ている笹塚の姿に弥子は不思議そうな顔をした。今日は宿直だとメールで話していたので、お弁当を作って会いに行くと返信していたのにこれから何かあるのだろうかと弥子が首を傾げると、笹塚は小さく頷いた。

「‥決まりでね。宿直する時は制服に着替えるんだ」

「そうだったんですか」

格好良い

笹塚を見上げて呟いた弥子の頬が桜色に染まっているのを見た匪口の心にもやもやと嫉妬がくすぶっていく。

「じゃ、俺らこれから‥」

「匪口」

食事に行くから、と続ける筈だった言葉は笹塚の抑揚の無い声に阻まれた。先約があると告げる彼の声が低い。

「でも、笹塚さん泊まりだろ?」

釘を打つつもりで食い下がると笹塚は、弥子が手にしていたもうひとつの紙袋を手にとって匪口の前に翳して見せた。

「‥一緒に飯を食うのは、俺」

慌てている弥子の肩に手を置いてから、上へ行こうと階上を指差すと途惑っている少女をエレベーターへと促す。

「っと、ごめんなさ「匪口は何処に行った!?」

謝りかけた声を遮って聞こえてきたのは笛吹の甲高い怒鳴り声。一般人の出入りが殆ど無いとはいえ、正面玄関先で大声を出すのは如何なものかとその場で三人が固まっていると、眉間に皺を寄せた笛吹がこちらに気付いて大股で近寄ってきた。

「お前はまともな書類ひとつ作れんのか!?」

黒いファイルを匪口に押し付けて怒鳴る姿は相変わらずだ。

「貴様がこれを作り直すまで目を離さないからな!」
「‥って、今からやるの!?」

当たり前だ!と喚きながら笛吹が匪口の腕を引いて去っていった後に、残された弥子の口から苦笑が零れる。

「笛吹さんて何だかんだ言いながら面倒見が良いですよね」

「ん、」

二人が消えた廊下に目をやって小さく笑っている弥子の姿に、笹塚の目がまた細められた。



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