魔人探偵脳噛ネウロ

□法律
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「模擬裁判?]


短くなった煙草を灰皿に押付けながら笹塚は聞き返した。

勉強をみて欲しい、というメールを受けてからどのくらい時間が経っているのだろう。二人のいる捜査一課は西日が差し込み、もうすぐ日没が迫っていた。どの係りも仕事に追われているため、室内は人気もまばらで静かなものである。

「はい。何でもウチの学校の先生が親しくしている大学の教授の御好意だとかで、見学させてもらえるそうなんですよ」

話を始めた弥子が開いている教科書は法律とは関係無い数学だったので、どうやら勉強に飽きてきたらしい。

「弥子ちゃんは法学部志望だったの?」
「いえ、まだ何も決めてません」

都内有数の進学高に通うとはいえ、そもそもの志望動機が『学食の素晴らしさ』であった弥子にしてみれば、進路などまだ先に思えた。

「希望者を募ってるんですけど、申し込む前に笹塚さんに訊いてみようと思ったんです」

確かに笹塚は法学部出身だった。
三年生の時に模擬裁判も経験している。

「ん‥。確かに普通は経験出来ないけど‥、興味があるなら行って来たら?」
「そうですね‥、興味はありますけど」

言ってはみたものの、裁判そのものに興味がある訳ではなかった。


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