【BL小説】ぬらりひょんの孫
□遠い貴方に想いを込めて 【鯉首】
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皆ああは言いつつもこっそりリクオさまの願い事は確認している。
毎年一つには選べないとうんうん唸りながら、リクオさまは結局、
「おじいちゃんみたいなりっぱなようかいの主になって、学校のみんなとぬら組のみんなとなかよくできますように」
と、どれもこれも盛り込んだ願い事を短冊に書くのだ。
てっぺんのその願い事の下に、皆リクオさまの健康だとか奴良組の繁栄だとか思い思いの願いをぶら下げていく。
「首無、あなたはいいの?」
リクオさまの成長を願ったであろう自分の短冊を飾ったあと、雪女が私を振り返って尋ねる。
「まだ書いてないから僕はいいよ、あとで自分で吊るしておくから」
そう言うと、雪女はそう、と返事をして微笑んで、またリクオさまをかまいに行った。
自分の分の短冊を見つめる。
嘘だった。
もうとっくに書いてあるのだ。
人には言えない願いを。
遠くへ行ってしまった、大切なあの人への思いを。
今年もまた、笹には吊るさず自分の懐に静かにしまうのだ。
この届かぬ思いは。
短冊を懐にしまってから、顔をあげてあの人の残した、あの人の面影のあまり残らない、小さな宝物を見た。
楽しそうに笑っている。
・・・・・・それでお前も幸せだろう?
それで俺は十分だ。
ふと家の中に戻ろうとすると、総大将と目が合った。
総大将はふっと目を閉じて、小さく頷いた。
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遠い貴方に想いを込めて。
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