【BL小説】ぬらりひょんの孫

□はじめてはあなたと 【猩首】
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「なんか悪いっすよ、わざわざ泊めてもらうなんて・・・」
「そんなことないよ。他の幹部の人たちなんかこれから夜明け近くまで食べて呑んで昼間まで寝ていくだろうから」


冗談めかして言いながら、首無が笑う。
その笑顔に自分も口元を綻ばせ、猩影は首無のあとについて奴良組本家の長い廊下を歩いた。
今日の総会は実に円滑に終了して、他の幹部たちは自分の部下に部屋の用意を頼むやいなや大広間へと向かった。
首無はまだ本家に慣れない猩影を気遣って、先に落ち着ける部屋を用意しておいてやろうと思ったのだ。


「あんまり他の幹部の人たちと部屋が近くても居づらいだろうからこの部屋は少し離れてるんだけど、いいよね?」


一枚の襖の前で立ち止まり、振り返りながら首無が問い掛けた。
猩影が頷くと、首無は続けて言う。


「食事のあとだと猩影も疲れちゃうだろうし、もう布団用意しちゃうね」


襖に手をかけようとするが、それを猩影が止める。


「兄貴大丈夫っす、自分でやりますから」


あまり世話をかけては申し訳ないと思ったのだ。


「そう?」


首無は、きょと、とふわふわと浮いたままの首を傾げた。
薄い色の髪がさらりと揺れる。


「じゃあ僕は台所の支度を手伝ってくるから」


食い下がることなく、首無は台所のほうへと踏み出した。
と、その顔に浮かぶ可愛らしい笑みを見た猩影はふと気付く。
せっかく久しぶりに首無と二人になれたというのに、自分はその時間をわざわざ短くしてしまったのではないか。


「あ・・・・・・っ、首無の兄貴」


呼び止めると、首だけでくるりと振り向いた。
しかし、呼び止めたはいいものの、何を言ったらいいのかわからない。


「やっぱり布団・・・」などとはもちろん言えるわけもなく。
どうしたの?と目顔で問う首無の笑顔に、猩影は口ごもる。


「・・・っ、」


右手で首無の肩をつかんで、もう片方の手は首無の頬に添えて顔を引き寄せる。
そして、赤くなっているであろう顔を見られないように、さらさらの前髪の上からその額に口づけを落とした。
ゆっくりと手を離して一息つくと、猩影の目の前の首無は一瞬ぽかんとしたあとくすりと笑った。
それを見てなぜかさらに顔を赤らめる猩影。


「猩影」


首無が優しく名前を呼ぶ。


「夕飯のあとに、また来るからね」


そう言って首無は、猩影の頬にちゅっとくちづけた。










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