nov4

□考古学者
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今まで、こんなにも深入りしたものがあっただろうか。



裏切り



それは私にとって一番重要で、唯一自分を守るものだった。


自分以外の人間なんて、信じない。


信じたくもない。


いつもそうやって、自分を守ってきた。


自分以外の誰かを守りたいと思うことなど、これまであっただろうか。



(あなたたちに出会うまでは、)



「ろーびーんー!!」



遠くで、私を呼ぶ甲高い声がする。


どたどたと、廊下を走る音が近づいてくる。


ドアが勢いよく開かれるまであと4秒。





ばたんっ


「ろーびーんー!!」



私の名前をここぞとばかりに叫びながら部屋に飛び込んできたのは、


いつもの笑顔。


「ろびん!しまだよぉ!」

「あら、ほんと?」

「うん、はやくいこぉー!!」

「えぇ、」


瞳をキラキラ輝かせながら私の手を引くあなたは、


(私の守りたいもの、)




「ロビンおせぇぞ、何やってんだ!!島だぞ、島!!早く降りようぜ!!」

「あ、こらルフィ!ったくもー‥‥。」

「おおおおお俺は、し、島に入っては、いけない病が‥‥。」

「その病気はおれには治せないぞ。」

「留守番はそこのマリモでいいんじゃないっすか、ナミさん。」

「あぁ?てめぇがしろよエロコック。」

「ふざけんな!やんのか?!あ゙ぁ?」

「上等だ‥‥、」

「やめなさいっての!!」






「ふふっ‥、」


いつもの光景が、甲板で広がる。


何も変わらない日々。


けれど私にとってその光景は未だにまぶしくて、幻のようで。


いつか、あなた達は、私を仲間と呼んでくれなくなるかもしれない。


裏切ってしまうことよりも、


そのことの方がずっと、怖い。



(できるならばこの光景を、いつまでも見ていたい。)


もしもまた、ひとりになってしまった時に、私がここにいた証拠として。




「ろびんもはやくいこっ」


右手から感じるこの温もりは、嘘ではないと信じたい。


もしかしたら、この小さな手は、私を一生放してはくれないのかもしれない。


そんなうぬぼれさえ感じるこの船で、私はまた一段と、ひとりでいる寂しさを忘れていく。






ずっとひとりだった時間の分だけ、今この幸せは大きく降り積もる。


end


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