nov1

□わかってない
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「やめとけって」「やだ」「おい」「いつまでも子供扱いしないで」「そうじゃねーって」「大丈夫だもん」「待てよ」「離して」「もうしらねーぞ」


俺の手を振りほどいてぱたぱたと走り去っていく幼馴染の背中に、追加でため息を投げつける。ばか野郎。誰がどんな思いで止めてると思ってんだ。子ども扱いなんて、そんなもんとっくにやめてるよ。俺は、


言いたかった言葉は、結局口に出す間もなく頭の中でぐるぐると渦巻いて、なんとなく後味の悪いまま教室へと戻る。開けっ放しの扉をくぐると、赤い髪の周りに集まった野郎どもが、おいどうだった?と口を開く。その表情がわかりやすいほどにおもしろがっているとわかって思わず眉を寄せる。



「むりだった」


「あーそうかーやっぱりなー、」


あいつ頑固だもんな、なんて大楠は笑う。


「笑いごとじゃねーってのに」


人の心配なんか二の次なんだろう。面白ければそれでいいこいつらは、いくら不機嫌そうに見せてもけろりとした顔で「それでもどうせ行くんだろ、洋平君は」とおどけたように手を振る。


その中でひとり状況を掴めていない花道だけが、なんだなんだと叫んで、鬱陶しそうに高宮が説明をはじめた。一度聞いただけでも苦々しいその話を二度も聞く気にはなれずに、「煙草」とだけ呟いてその場を去った。





「こ、告白ぅ?!」


「おう、」


「それで、付き合うのか?!なまえは!」


「いや、断ったんだとよ。でもそいつが、どうしてももう一回だけ会ってほしいっつってうるさくて、結局会うことにしたらしい。」


それが、今日の放課後ってわけだ。


人差し指をたててびしっと決めた高宮に、花道もほぉーと頷く。それで洋平はあんなに。なるほど。ようやく納得ができて、それでも待てよ?とはてなを浮かべる。



「一回断ってんなら、そんな心配しなくても‥‥」


「それがなー‥‥‥」


花道の言葉に、高宮は野間と大楠を順番に見て、言いづらそうに言葉を続けた。



「相手に問題がなー‥‥」







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