機械世界
□酒
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綺麗な満月が空に浮かぶ
雲ひとつない空に星空も一緒に光っている
それを見て一言、綺麗と漏らさぬ者はいないだろう
劉備もまた、満月を見て綺麗と漏らした一人だった
一方劉備の隣で酒を飲みながら満月を見ている荊州は何も言わない
ただ、見て
何処か悲しいような表情をしている
「荊州、綺麗だな」
『…』
劉備が笑顔で言えば荊州は無言のまま酒を飲む
荊州は何も答えない
綺麗なのかも分からない
劉備は首を傾げる
『…俺には少し眩しい』
「え?」
『…俺には月の光さえも…眩しい』
「荊州……」
少し寂しく、苦しそうに言う荊州に劉備はどう返せばいいのか困る
結局無言になってしまう
静けさがあたりを支配する
『本当はお前にあった時から俺は眩しいと思っていた』
「…」
『お前は海…。俺は…お前と一緒にいていいのか分からない。今では幽愁と分離して俺は【荊州】になった。それでも光を眩しいと思う、光が怖いと思ってしまう…』
「荊州」
『俺は…狂ってるか?』
「荊州!」
大声で劉備が言えば荊州の肩がビクリと跳ね上がる
少し驚いた表情で荊州は劉備を見ている
持っていた酒瓶を落とさないように持ち直す
劉備は荊州に近づく
しかし荊州は劉備が一歩近づけば一歩引く
ムッとしかめっ面になる劉備
「荊州」
また一歩近づく
また一歩引く
小さな小さな鬼ごっこ
「逃げないで」
『お前が近づかなければいい』
「じゃあ荊州逃げないで」
トンッと荊州の背が背後にあった大きな木にぶつかる
しまった、と思い荊州は木から逃げようとするがその前に劉備が両手を荊州の横につく