機械世界―弐―

□会いたくて愛おしくて
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消えた
何時から?
そんな事覚えてなど居ない
いないのだ
だから
探しても無駄なのだと
悟ったのはいつからだったか…



『関羽が死んだ―――?』

最初こそ何の冗談だと言い返したかった
何故?
誰に?
何故そんな状況に
否、それよりも

『…苦しんでか?』

そう聞けば報告してきた者は俯いていた顔を上げる
そしてキッパリと
いいえと答えた

『…そうか、ならいい』

目を細め言う
幸せに逝けたのなら、悔いなどないだろう?
白状にも荊州は思うのだ
そしてもう枯れてしまった涙さえも忘れてしまいたかった
荊州は目の前に広がる光景を見て
微笑した

『あぁ、久しぶりに血が滾るな』

そう言うのだ
まるで獣のように血肉を欲した化け物のように眼光は鋭く光る
隣に居た幽愁さえもゾッと何か背筋が凍る想いだった
分裂して闇の力が小さくなったとはいえ
荊州は元々闇に身を沈めていた
今、荊州の周りに漂う闇はきっと
ほのかに`深い'

「…荊州?」

少し怯えたように話しかける幽愁に荊州は心配するなと答える
ソッと頭に手を置き、撫でる
それだけでも緊張の糸が切れたように幽愁の表情が優しくなる
荊州は目を細め
笑う

あぁ
もう会いたいと言うこの想いは何処へ置いていけばいいのだろうか?

どうすれば
置き去りにできるのだろう…?

いつのまにか報告に来ていた者は退いていた
いつまでも続く暗い空を見上げる
本当なら
いつも隣には

グラリと
地面が揺れた
あぁ、始まるのか
荊州は知らずに高ぶる気持ちに蓋をしていた
ウズウズとしだす気持ち
この刃で斬りたい
血肉を浴びたい
そう訴えるのだ

「荊州」

フッと幽愁が荊州に声をかける
瞳が幽愁を映す

「来る、絶対に。だから…」

『言うな』

言葉を遮る荊州
何を感じ取ったのだろうか?
先ほどよりも鋭くなる眼光に
幽愁は知らずに生唾を飲む
一歩、後ろに後退してしまう

『もう…いいんだ。もう…』

果たしてそれは幽愁に言ったのか自分に言い聞かせたのか…それは分からない
ただ荊州は独り言のように呟く
ただの強がり
幽愁は
荊州に言いたかった

(大丈夫、きっと来るから)

確信を持たない思いに舌打ちさえもしたい
だけど
きっと来ると分かっているからこそ
伝えたいのだ

(荊州を泣かせるな、劉備)

最愛の人を泣かせるなんて最低だぞ
と悪態をひそかにつく幽愁に気づくはずもない荊州
また
空を見上げる

そして静かに地を蹴った
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