機械世界―弐―

□鴉が鳴いても帰らない
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いつもの日常に疲れた訳じゃない
ただ、少し苦しいな
そう思っただけだった
少しだけ自由になりたくて家を出た
まだ空は明るかった


冬は日が暮れるのが早い
気が付けば辺りは薄暗くなっている
冷たい空気が身体を包み込む
01は一人、何もする事なく空を見上げている
冬空が少しずつ暗くなっていく
01は静かに息を吐いた

『…やっぱ黙って出てきたら駄目だったかな?』

ポツリと呟く言葉
今頃家では弟達が帰って来ているだろうか?
そして俺が居ない事に何か思うだろうか?
…否、また何処かにいるのだろうと呆れてしまうだろう…
01は思わず苦笑してしまう
どうせ
どうせ
そればかりが脳裏を横切る

『俺って…何で長男なんだろうなぁ…』

向いてない事は百も承知だ
いつも弟達を困らせている、振り回している
だけどそれが楽しいと思った
一緒にいる時間が何よりも好きだった
だけど
やはり俺には長男には向いていない
どれだけ迷惑をかけてしまってもふざけてしか謝れない…
02には…凄く迷惑をかけた
ステイメンにだって…
何で俺が…長男なんだろう……

『…情けないなぁ…』

零した言葉に感情など篭ってないどいない
苦しいと思ったのは何時からか?
悲しいと思ったのは何時からか?
寂しいと思ったのは何時からか?
全てが時に流れて消えてしまう
考えるのも放棄してしまうほど長い時間
何時しか理由さえも分からなくなってしまった

木々が風に吹かれて揺れる
木の葉が舞い、01の周りに落ちていく
01は少し苦笑すると歩き出す
立ち止まってもどうせ意味などない
ならば進むしかないだろう
どうせ誰も来やしない
それを望んでいる自分が居て吐き気がした
そんな自分が嫌いで
また
心が苦しくなる

いたいな

いたいな

消えたいよ

どうせ

だれも

きづきはしない


『鴉が鳴くからかーえろ…』


『鴉が鳴いても帰らない』


風に紛れ言葉は消えた
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