捧げ物

□Friends and Buddies…
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火花が散る
一瞬一瞬に火花が散り、交戦する刃と刃…
否、刃と言うには荒々しい
例えるならば…光
光と光がぶつかり合い、交差する刃…
地面へと落ちていく雫は赤に染まり、そして波紋を作り消えていく……

自身の命を賭け

大切な場所を賭け

そして 運命 を賭け

二人のMSは目の前にいる紫の瞳を持つMSと斬り合う―――


フメツにとってはかつての相棒…
背を託し、命をお互い信頼で守り抜く

桜丸にとってはこの世にただ一人の兄…
血が繋がった家族であり頼れる存在

そんな大きな存在、昔繋がっていた存在が今まさに敵として目の前に現れ、自分達を殺そうと襲い掛かっている…
誰がこの事実を信じられよう?
しかしこれは現実であり、目の前に突きつけられている事なのだ

「キライダキライダキライダキライダキライダキライダキライダキライダキライダキライダミンナミンナダイッキライダ
ミンナコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…」

まるで壊れた機械のように同じ事を繰り返し言う黒蘭

『黒蘭……』

何処で歯車は狂ってしまったのだろう
何がいけなかったのだろう
何故?何故なのだ???
コイツが……
『悪』に染まる必要はない
ましてや、無理に…黒く染まる必要もないのだ……
フメツは歯軋りをしながら黒蘭から繰り出される重い攻撃を防ぐ

「黒蘭っっ!!!」

フメツへと攻撃を集中している黒蘭に突っ込んでくる桜丸
背後に回りサーベルを振るう…が、鋼の翼によりそれは遮られる
と、同時に翼で桜丸を弾き飛ばす
強い衝撃が背中から全身を駆け巡る
地面へと背中を強打した桜丸は血を吐き捨てると痛みをこらえ、立ち上がる
目の前がぶれる
今まで感じたことのない衝撃に激痛…
ピリピリと張り詰められた空気に殺気
ボロボロなハズのフメツの瞳にはまだ希望が宿っている
しかし桜丸には?
何が…?

「……ナゼ…?ナゼ、ナンダ桜丸…??」

声は発する黒蘭
紫の瞳が桜丸を映している
光のない瞳が、ただ桜丸を睨んでいる

「イタンダロウ…?クルシインダロウ?」

「…え?」

「イヤダ、イヤナンダ…ダカラ、モウ…ネテナキャダメジャナイカ」

途切れ途切れに発せられる言葉に桜丸は目を見開く
あの黒蘭が、桜丸を心配するかのように言葉を発したのだ

「黒…蘭……」

何で…や?
何で…ウチん事…心配するんや…?
今まで…今まで何かあったって…

突き放していたくせに

今更…!!!!

「そげん言葉…聞きとうもない!!!」

キッと正面から黒蘭を睨みつける
その瞳は真っ直ぐだ
聞きたくもなかった
今更兄らしくされても…



嬉しくて



「ウチに…今更優しくするなぁあああ!!!!」

地を蹴り上げた桜丸は黒蘭へと真っ直ぐ突っ込んでいく
片手にもったサーベルの切っ先を黒蘭に向けて…

『桜丸!!!』

突然の行動にフメツの反応が遅れる
自身で貫いた左足に激痛が走った
そしてまたも遅れる行動

「ナゼ、ナンダ…!!!!!!」

黒蘭の紫のサーベルが桜丸のサーベルをいなす
勢いがあったため桜丸はそのまま黒蘭の横を通り抜けてしまう
そんな桜丸の片腕を掴み黒蘭は思いっきり引っ張る

「!!」

いきなりの事で桜丸の体の重心が後にそれる
バランスを崩し背中から地面へと倒れる
背中を強く強打した桜丸は声にならない叫びをあげる
何故なら…桜丸の背は紫のサーベルが先ほどまで貫いていたのだから…
止まっていたはずの血がまた流れる
口から吐き出される血に黒蘭は眉間にしわを寄せるのだ

「ナゼ…キミハモウクルシマナクテ」

ズキズキと痛い頭、考える事さえもまともにできない
何で今更……
伸ばされる手に桜丸の体は硬直する
やられる!!!!

瞬間
フメツが黒蘭に体をぶつける
一緒に地面に転がるフメツと黒蘭、フメツはすぐに体制を立て直し黒蘭から目を離さない
左腕に持っているサーベルを地面に突き刺し立ち上がる
肩で息をするフメツ
顔色も悪い

「フメツはん…」

『大丈夫か…桜丸?』

駆け寄ってくるフメツに桜丸は大丈夫やで!と返すと黒蘭を見る
黒蘭は地面に倒れたままだ
否、立ち上がろうとしない

「ナゼ…ナゼナゼ…!!」

繰り返されるのは疑問の言葉
分からない、分からない!!!!!
何故なんだ!!!!!
ゴォッ!!!!
強い風が二人の間を吹きぬけていく
あまりにも強い風に顔を自分の手で庇う二人は気づかなかった
すぐ目の前まで黒蘭が迫っていた事に……

『?!』

フメツの左足が動かなくなる
そして鋭い痛みに顔を歪める…
そうフメツの左足には黒蘭のダガーナイフが深々と突き刺さっていたのだ
動きを封じられた、その事に気づいた桜丸はフメツに声をかけようとして口を開くが、
言葉が発せられることはなかった
黒蘭が桜丸の首を掴み上げていたからだ
足が地面から離れ空気を吸い込もうとするが黒蘭の手がその空気を取り込む器官さえも狭くさせる
息をするなと言うかのように拒む
紫の瞳が桜丸を見ている
その瞳は…何処か悲しさを含んでいた

「ナゼ、フメツナンダ…僕、だって…!!!」

「キミを大切に思っている!!!!!」

悲痛にも聞えるその言葉に桜丸は目を見開く
今、黒蘭は何と言っただろうか…?
今のは…本当に…思っていた事なのだろうか?

嘘や…
嘘やぁあああああああああ!!!!

グシャッ…!
鈍い音が響いた
フメツは自身の左足に突き刺さっていたダガーナイフーを引き抜きそのナイフで桜丸の首を持っている腕を突き刺したのだ
痛みにとっさに桜丸の首から手を離した黒蘭をフメツは腹を殴り吹き飛ばす

『……っ、大丈夫か桜丸?!』

痛みをこらえながら桜丸を心配するフメツ
桜丸は混乱していた、先程黒蘭が言った言葉に…
誰が誰を大切に思っている??何が??
黒蘭は…何を言いたいのだろうか??

「ぅっ……」

口元を押さえ何かこみ上げてくるものを抑える
気持ち悪い
何だこれは???

『……』

そんな桜丸の様子をフメツは声をかける事なく黙って見ていた
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