捧げ物

□幸せなど続きやしない
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桜丸が目を覚ますと廊下は明るくなっていた
昨日は夜中に来ていたので少し薄暗かったが今では奥まで見える
いつの間にか寝ていたのかフメツと一緒に座っていたソファーで桜丸は目が覚めた
しかし隣にはフメツの姿はない
桜丸は辺りを見回す
そして立ち上がり、病院中を回る
しかし、フメツは見つからなかった

【俺を殺してくれ】

昨日の言葉が蘇り顔から血の気が引く
最悪の状況と予感しかできない
脳裏で横切る予感がより恐怖を煽る
その予感を振り払おうと頭を振る、と、ある部屋の名前のプレートが目に入る
桜丸はその病室のドアにソッと手をかけ、開く
するとそこにはベッドに横になっているマークUがいた
マークUは桜丸に気づいたのかこちらに顔を向ける

「よー…桜丸…」

少し笑いかけるように言うマークU
桜丸は病室に入る

「マークUはん…身体大丈夫なん?」

「あぁ…何とかな?」

そお言いながら苦笑するマークUに桜丸は少し安心する
しかし何処か表情は暗い

「そういえば…フメツはどうしたんだ??何処に…いる?」

フメツの名を聞いた桜丸の肩が少しはねる

「…わからへん…いなくなってもうたんよ…昨日まで一緒にいたんやけども…」

桜丸は俯いたまま答える
その答えにマークUは何もいえなくなり同じように俯く
暫く沈黙が続く
そしてその沈黙を破ったのは
マークUだった

「言っておくけどよぉ…アイツは、フメツは何も悪くねぇからな?最初は…確かにビビッたし…驚いたさ。だけどよアイツいつも平和主義者って言ってるじゃねぇか、傷つけないとかも…」

「…」

「前に…少しだけ話し聞いた事があるんだけど…、アイツあの明るさでスゲェ辛い事あったんだよ。人の苦しみを知ってるんだよ、そんな奴が俺を殺すわけねぇだろ…?フメツにはフメツの理由があるんだ、俺達にはどうしてもいえねぇ様な理由がよ…。でも俺はアイツの良い所とか一杯知ってるからさ、てか良い所しかしらねぇし。だから俺はアイツを、フメツを信じてる。……フメツに会ったら言ってくれよ」

「また勝負しようぜ…ってさ」

その言葉を聞いた桜丸は心が暖かくなる
これだけ信用してもらえているのだ
それだけでも嬉しい
フメツは、一人ではない

「おん、絶対に言う…」

突然
桜丸の声を遮るかの様な病院の館内放送が流れる

『緊急連絡、エリアF-2-7で集団による通り魔が発生、救急隊は直ちに出動せよ』

異様に大きく響く放送に病院はざわつく
ナースやらいようにばたつく廊下
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