捧げ物

□また廻る日まで
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大きな声が朝から響いた

『劉備ぃいいいい!!!!!』

その声を発したのは荊州だった
どうやら劉備が修行から逃げたらしい
荊州は鬼の形相で劉備を探している
そんな荊州を見ている人影

「荊州?どうした??」

『箜紮!』

共に行動をしていた箜紮
荊州は箜紮の元まで歩み寄ると言う

『劉備を知らないか?!』

その声とドスのきいた声に少し苦笑している箜紮

「いんや、知らない。てか…苦労してるな」

苦笑しながら言う箜紮に荊州は眉間にしわを寄せる
そして一回だけため息を吐く

『苦労…なぁ…』

荊州は疲れ切ったような声で呟く
苦笑している箜紮は荊州の腕を引く
たまには休んだらどうだ?と言いながら
それを断ろうとするがハッキリ言うと疲れてるので荊州もため息しかでなかった

『…苦労してるのは俺だけじゃねぇだろ…』

「そうか?」

『箜紮だって、そうだろ?』

「わからねぇな」

木下に腰を下ろす二人
持っていた水筒を荊州に渡す
荊州はすまないと言うと受け取り少しだけ水を飲む
少しだけ風が吹く
冷たい
季節は段々冬へと近づいてきている
目を細める箜紮

「寒くなってきたな」

『…そうだな…もうすぐ冬か…』

空を見上げる
青い空に灰色の雲
日が暮れるのも早くなってきた
何処か虚しくて哀しい季節…

『…なぁ箜紮』

「?どうした?」

『……苦労ってのはどんな事をしたら苦労なんだ?』

「え?」

問われた質問に箜紮は首を傾げる
苦労とは??
何をして苦労となる??
疑問が頭の中を右往左往している
荊州は空を見上げたまま言う

『俺は劉備達といて、楽しい。確かに疲れたりする事はあるが…苦労してるとか思った事はねぇんだ。俺がおかしいか?』

「……成る程ね…。そおいう事か」

微笑を浮かべる箜紮
今度は荊州が首を傾げる
どうした?と返す
すると箜紮は少し微笑みながら荊州に言う

「それでいいさ、本人が苦労してないと思ってるなら…それでいい。荊州の中で劉備達といるのが当たり前であり楽しい事の一つならば…苦労じゃねぇのかもしれないしな。俺はそう思うよ」

頭を撫でる箜紮
荊州はただ黙って
空を見上げていた目蓋を
閉じた

「荊州ー!!」

フッと誰かが呼んだ
目蓋を開け
瞳を向ける
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