捧げ物
□罅と亀裂
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フメツはんが死んだ?
桜丸は目を見開いたまま、言う
呟かれた言葉
信じられない
「どお言う事や?!」
問う
混乱している頭
そんな桜丸を赤目はクスクスと笑っている
フメツであってフメツではない存在
軍に作られた
兵器
『アイツはな、今闇の中にいる。俺がずっといた場所にアイツがいる。アイツはな、俺を消そうとした…まぁそんな簡単に消えはしねぇがなぁ?』
「?!!」
『崖から落ちて、俺もろとも死のうとしたんだろうな。無駄なあがきだがな…。結果アイツは死んだ、俺が表に出てるのは生きる事を放棄した`フメツ'の変わりなんだよ!!』
楽しそうにケタケタと笑う赤目
何が面白いのだろうか
何がそんなに楽しいのだろうか?
何一つ
楽しい事などありはしない
自分を、そして…マークUを傷つけ
それどころかフメツを苦しめた
この暴走の人格がした犯した罪は消えはしない
永遠にフメツの記憶に残り、フメツ自身を苦しめるのだ
桜丸は
拳を握り締める
怒りが
心の底からわきあがってくる
「なしてや…?フメツはんは…生きる事を放棄する人やあらへんで?!お前が…お前が苦しめて来たんやろう?!なしてそげん威張ってられるん?!」
『はぁ?』
「お前が仲間達に手ぇだしたんやん!フメツはんは逃げたりせぇへん!!ウチらを守ろうとしたんや!!!こんボケ!フメツはんを返せ!!フメツはんに…謝れ!!」
スッと鋭くなる目つき
赤目は不愉快だった
『フメツの野郎ばっかにまかせっきりのテメェが何偉そうな事言ってやがるんだ?いざと言うときは何時もフメツを頼ってばかり。コイツが苦しんでる時もテメェは…頼ろうとしたじゃねぇか?』
「っっ!!」
核心をつかれた
桜丸は悔しそうに拳を握り締める
悔しい
悔しい
何でこんな…!!
「?!ぅあ?!」
ガッと頭を掴まれる
赤目は桜丸と目線を合わせるため、しゃがむ
近くで見れば炎や血のように赤い瞳
まるで憎しみに染まっている
桜丸は知らずに冷や汗をかく
『テメェには`フメツ'を救えねぇよ。無駄なんだよお前の思う気持ちなんかよぉ。コイツに同情なんざいらねぇ、むしろ同情されるのがコイツにとって一番の苦痛なんだよバァーカ』
「?!」
ニヤリと笑う赤目
パッと頭を掴んでいた手を離す
すると桜丸はそのまま地面へとひっふす
悔しくても何もできずに
桜丸は目に涙を溜める
『悔しいか?悔しいだろうな。だがな、いつも蔑まされて距離をつけられて大切だと、信じていた仲間に信用してもらえなかったフメツはもっと苦しくて悔しかったんだよ。文句があるなら俺を殺してみろよ、テメェの手に握られてるサーベルはただの玩具じゃねぇーだろ?』
目を細めたまま言う赤目
先ほどとは違う表情
笑っていない
何一つ
心から、笑う事などないのだ
瞬間
赤目の頬を掠める光
赤い瞳が後ろを見る