コラボ小説

□信頼さえも裏切って
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やはり、断ればよかった
総司令官に殴られても、上官に殺されそうになってでも断ればよかった
今更後悔しても…意味などないのだが
戦場の独特の空気にフメツは目を細めていた
片手にもっているサーベルが異様なほど赤々しくて腹立たしい
今すぐにでも投げ捨てたい
しかし隣にいる黒蘭を守るには手ぶらなどできやしない
そして此処は最前線
今更…引き返せるわけもない
静かにため息を吐くとフメツは黒蘭を見る

『黒蘭、大丈夫か?』

問いかけると黒蘭は小さく頷く
しかしその体は少しだけ震えている
やはり怖いのだろうか?
フメツは目を細め思う
好成績を取っているとはいえ…黒蘭はまだ若い
なのにこんな…こんな任務

『…チッ…』

舌打ちを零し、先を見据える
見えてきた…敵軍だ
やはり多い
敵軍に染まった大地は異様なほど黒い
地響きが遠くで聞える
あぁ…もうすぐだ
後少しで……

サーベルの塚を強く握り締める
手に滲んでいる汗、ピリピリとした緊張感
この時は好きだ、この何とも言えない感覚…
爽快感と快感…
今から始まるのは争いと言う嫌いな事なはずなのに、感覚はまったく勝負する時と変わらないのだ
間違えるな
コレは勝負とは違う
もっとも嫌いとする
`争い'なのだ
フメツの口元が自然と緩んだ気がした

(…?フメツ…伍長?)

黒蘭は首を傾げる
あのフメツが…少しだけ楽しそうにしている?
馬鹿な
フメツは…平和主義者だ
なのに…

(…気のせいか…)

特に気にしなかった
きっと何かの間違いだろう
そう思ったからだ

『黒蘭』

フメツが低く呟く
黒蘭が瞳を向ける

『行くぞ』

「了解」

サーベルを一振りし、フメツと黒蘭は敵軍を睨みつける
黒蘭はゾクゾクとした奇妙な感覚に襲われている
これに飲まれてはいけない
これに飲まれたら、終わる
だが、初めての大きな任務に黒蘭は自然と空気に飲まれ始めていた
そんな黒蘭の名を呼び、頭を撫でるフメツ

『黒蘭、飲まれるな。戦場の空気に飲まれたら……戻れないぞ?』

『だから、飲まれるな』

『後悔したくないならな』

言葉の一つ一つが重い、そう感じた
ゴクリと唾を飲み込む、冷や汗が頬を伝う
苦笑を漏らすフメツ

『そう肩に力を入れるなって、大丈夫だ。お前は俺が守る』

言葉だけでも伝わる優しさ、そして強い決意
フメツを見ると、真っ直ぐ敵軍を瞳に捕らえている

「…フメツ伍長…君を信じるよ」

ニッと一回笑い、もうフメツを見る事はなかった
今、此処で二人は任務を完了させるために動き出す
お互いに命を預ける
そして敵軍が、発砲をすると同時に

二人は地を蹴り上げる

ブーストを上げる、スピードが上がる

二機のMSが今

戦場を舞う
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