コラボ小説

□悲劇と吸血鬼
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夜、冷たい風が吹き抜けていく
松明の明かりが風で揺らめく
その松明の揺れを眺めている騎士が一人…
見回りをやっていたはずのトラヂェディである
しかし今現在トラヂェディの居る場所は本来見回りの場所とは違う
今ではあまり使われていない部屋である
いたるところに埃や蜘蛛の巣がはってある
それを見る限り使われてないのは明白である
そして何故トラヂェディがこんなところにいるかというと…
単刀直入に言うならばサボりである
堂々とした
夜の見回りは面倒でしかないし寒い
だからトラヂェディはよくこの部屋でサボるのである
松明を壁にかけ、その炎を眺めている
それの何処が面白いと聞かれても別に面白いから見ているわけではないため答えようがない
ただやる事がないだけである
サボってる間は暇で仕方ない
部屋にある古書は随分と前に読んでしまった
ならば素直に見回りをすればいいものの…そんな事はまったくする気がないトラヂェディである
一つ、欠伸を零す
夜は眠いものである
それに最近はまったくと言って寝れていない
そのせいで疲労が溜まっている
本当ならばすぐにでも寝てしまいたいのである
また欠伸を零す
寝たいが流石に此処で寝たらやばいだろう
風邪を引いたら後が面倒だしF90に見つかったらもうそれどころではない
隙間風が入ってくる
あぁ…寒い
寒いのは少しばかり苦手である
トラヂェディは自身の身体を縮こまる
マントに包まり少しでも暖を取ろうとする

カタンッ

物音がする
窓のほうを見る
しかし窓は開いてはいない
なら何処から?
トラヂェディは目を細める
ヒヤリッ

『冷た!!』

思わず声が裏返ってしまう
突然誰かに冷たい手で頬を触れられ声を出してしまう
いくら脅かすにもこんな事しなくてもいいんじゃねぇのか?!
トラヂェディはその相手を睨みつける
と、同時にキョトンとした表情になる

「よぉ」

そこにいたのは紛れもなくあの吸血鬼なわけで…
トラヂェディは心底面倒だと思ってしまう
何せトラヂェディはこの吸血鬼の相手がかなり面倒であると思っているからである
この吸血鬼_アガリアレプトは最近モロクと同じようにブリティス城に来る事が多い
目的は血を求められる事が多いのだが時折例外もある
今日は何をしにきたのだろうか…

『何だよアガリアレプト、今日はモロクいねぇぞ』

「知ってるに決まってるだろう」

『…そーかい』

アガリアレプトがモロクを狙ってる事は薄々と気づいている
ただどのような目的で狙ってかまではトラヂェディは知らない
知ろうともしない、深く漬け込めば面倒事がまわってくるのは目に見えている
だからさっさとアガリアレプトには退出願いたいものである

『で?何だ?用がねぇなら帰れ、俺は忙しいんだよ』

「此処でサボっている事が忙しいのか?」

『………』

コイツ気づいてやがる…
ニヤニヤと笑いながら言っているので確信犯であろう
そのムカつく様な顔を今すぐにでも殴りつけたい
しかしそれをこらえる
相手するだけ面倒である
しかし用があるとは何だろうか?
血でも望んでいるのであろうか?

『血か?』

「分かってるじゃないか」

『帰れ』

シッシッと追い払うようにするトラヂェディの隣にアガリアレプトは座り込む
隣に座られため息を吐くトラヂェディにアガリアレプトはトラヂェディのマントを掴む
それを取られたら流石に寒い…

『何だよ』

「邪魔だこれ」

『やめろ、寒いだろ』

「俺には関係ない」

『自分勝手め』

ギギギッと両者とも譲らない
無言のまま続くそれに静けさがます
風で松明の火が揺れる
いい加減マントが悲鳴を上げ始めたのでトラヂェディは開いている手でアガリアレプトの手をつかむ
冷たい
アガリアレプトの手は冷たく、まるで氷のようである
トラヂェディは眉間にしわを寄せ、息を吐く

『冷たいな、何でこんなに冷たいんだよ』

「知らん」

『…はぁ、ほらちょっと手ぇ貸せ』

アガリアレプトの手をトラヂェディは自身の手で包み込む
先程までマントに包まってある程度暖かくなっている手で冷たいアガリアレプトの手を温める

「なっ…」

『お前身体も冷たいんじゃねぇのか?もうちょいこっちよれよ、一緒にマントに包まろうぜ』

トラヂェディはアガリアレプトに近づき、自分のマントをはずし包まらせる
少し面積が足りないのは仕方ない
トラヂェディはアガリアレプトになるべくマントがかかるように肩にかける
アガリアレプトは頭の中で混乱していた
何故このような事をするのか理解できないからである

『外寒いもんなー…身体が冷たくなるわけだ、お前無理すんなよ?寒いなら寒いで何時でも俺の部屋来いよ、毛布くらいなら貸してやっから』

「…何で貴様の血を吸いに来た俺に優しくするんだ…迷惑じゃないのか?」

『迷惑さ、面倒くせぇさ、だがなほうっておけるほど俺は冷酷じゃねぇよ、アガリアレプト、お前が困ってるなら俺は助けるし駆けつけるさ』

ニッと笑い答えるトラヂェディにもはやアガリアレプトは声を失う
どうにもトラヂェディの考えは分からない
アガリアレプトはクスリと笑みを零す
お人好しと言うのだろうか、こういう奴の事を
モロクとはまた違う
面白い奴だ

「貴様は俺を何だと思ってるんだ」

『アガリアレプトはアガリアレプトだろ?友人って言うか…まぁ…少し気が抜ける相手?』

何となくだけど
そうつけたし、瞼を閉じる
アガリアレプトは心の奥が少しだけ暖かくなるのを感じた
包まれている手が暖かい…
あぁ…コイツは本当に…お人よしだ

「…そうか」

同じように目を瞑る
ポカポカと暖かくなってくる身体
心も温かく感じ心地よいと思える
と、トラヂェディが静かになっている
フッと見るとトラヂェディはそのまま寝息をたて寝ていた
コイツは本当に…まったく

「勝手に飲むぞ」

グイッと優しく
起こさぬように片手を引く
そして静かに牙を突き立てる
ゴクリと血を飲み込む
今日はこれだけでいいだろう
十分である

「……少し気が抜ける相手か…それはどんな風にとらえればいいんだ…“トラヂェディ”」

アガリアレプトに身体を預けるように眠っているトラヂェディを一度見
フッと笑う
モロクとは違う
まったく異なる相手

「ならば友人という場所も貰いたいものだな」

ボソリッと呟き、静かに瞼を閉じる
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