コラボ小説

□必要とされ生きてきて
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空からは雨が止むことなく降り続けている
もう随分と身を濡らしている
体は冷たく
暖かさなど感じない
酷く冷め切った瞳は
ただ何も映さない

目の前にあるもの全てがどうでもよかった

必要とされないからここにいる
そして未完成な作品として捨てられた
それだけの事だった
右目から流れる血
ポタポタと地面を濡らす

『…必要と…されない…』

未完成?
ゴミ?
それは何?
心がない俺には
分からない

人形のように冷たい心臓
MS_否、名は無い
名無しはボーと遠くを眺める

『必要じゃないなら…なんで…生まれた…生きてて…何の意味が…?』

自然と歩みを進める名無し
何もない廃墟は
名無しにとっては
都合のいい場所だった
誰もいない古びた家に
名無しは上がりこむ

冷たい壁、地面
雨はまだ止まない
生きる意味が

分からない

名無しは静かに目蓋を閉じた




ガシャァンッ!
廃墟に大きな音が響いた
いつの間にかこの廃墟には道を誤った者達が集まるようになった
知らずに集まったもの同士
喧嘩など殺し
それ以上の犯罪を犯した
その廃墟に住んでいるのは
名無しもまた同じだった
より強く
誰もが屈する力を名無しは求めていた
まだ小さいながら暗殺の仕方を独自で覚えた
誰も頼らない
己だけに使う力
弱者は強者に屈する
それだけだった
いつしか名無しは
恐れられていた

右の瞳だけに浮かび上がる刻印

しかし右目だけは
左目より視力が酷く悪かった
遠くのものも近くのものもぼやけてしか見えなかった
名無しはこの右目が大嫌いだった

『………』

名無しが最初に捨てたのは

感情だった
何にも無関心
同情もしなければ涙も笑みも零すことがない
次に捨てたもの

言葉

話し相手がいる訳でもない名無しはいつしか言葉を失っていた
何をするにも行動で伝える
…そもそも名無しには誰も近寄らなかった
名無しから発せられる以上に冷たい空気に
近づいた者は身を凍らせる思いだった

(…生きる意味は?)

(分からない…)

名無しは己の意味を探していた
作られ
そして捨てられた

そして生きている意味

また一つ
大きな音が廃墟に響いた
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