コラボ小説

□必要とされ生きてきて
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ある日
名無しは熱にうなされていた
突然のウイルス感染
名無しは天井を見上げていた
元々捨てられていたこのビルが立っている廃墟
そのビルの部屋
何もない部屋に名無しは壁に背を預けて苦しんでいた
誰も助けてはくれやしない
ここは頼れる奴など
信用していい奴などは
いやしない
名無しは
小さく舌打ちをした

『………』

汗が滲む
苦しい
そんな名無しに

追い討ちをかけるように最悪な状況が襲い掛かる
元々無かった窓ガラスとドアから一斉に発砲される
いきなりの発砲に名無しは身動きが取れなかった
体中に突き刺さる銃弾
身を裂くような痛みが全身を駆け抜ける
知らぬ誰かが名無しに近寄る

「ざまぁーねぇな?テメェいつも偉そうなんだよムカつく…」

パァンッ
名無しの肩を銃弾が貫く
痛い
痛い
名無しは
静かにその一人を見る
それがムカついたのか
そいつは銃口を名無しに向け
静かにトリガーを引いた

グシャッ

銃弾が右目を貫く
名無しは
ヒュッと息が止まる
言葉を忘れた名無しは
声無き声を張り上げる
枯れていて流れる事のない涙
名無しは
叫ぶ

「さぁて…そろそろ死んでくれよ?」

いっせいに向けられる銃口
名無しは
目を細める

『生きる意味を…邪魔するな!!』

潰れたはずの右目が
目の前にいる敵を映す
ハッキリと見える視界
そして
何かが切れた音




雨が
また同じように降っていた
目の前に広がるのは

屍ばかり

名無しは
いつのまにか治っている右目
視力もまた戻っている
右目だけがいつものようにぼやけている
真っ赤に染まった己
雨が少しずつ洗い流す

『………』

もとあった色など覚えていない
今は
灰色だった
哀しくなどなかった
感情などないようなものだ
名無しは
歩こうと一歩前へ出る
が、倒れる
足を撃たれたことに気づく
ところどころから流れる血

『……俺の…生きる意味…は、何?』

言葉を発する
忘れていたはずの言葉を…
掠れ掠れの声

何故
こうなった?
何故必要とされない?
無能だから?
未完成だから?

なぁ

俺は何?


『いらない存在?』

ポトリと
何かが零れた
雨?
いやこれは…



ゾワリと体が急激に冷える感覚がした
涙は弱者の証
嫌だ
嫌だ嫌だ
これ以上
必要とされないのは
嫌だ!!!

手を伸ばす
誰か
誰か!!

誰でもいいから助けて!!



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