コラボ小説
□いつかいつか その事さえも過ぎてしまって……
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拷問が終わり
部屋で虫の息で横になっている黒蘭
と、ドアが開き
フメツが入ってくる
『大丈夫…そうじゃねぇな…。すまねぇ、上官は頭に血が上るといつもあぁだからよぉ…』
苦笑しながら近寄るフメツに
黒蘭は冷たい目でフメツを睨みつける
そして触れる事を拒絶した
フメツは拒絶された事に対して別に何も言わないし驚かない
ただ黙っている
黒蘭はフメツを睨みつけたまま言う
「君に何が分かるんだ…?」
問えばフメツは返答しない
ただ目を細めるだけだ
「人殺しのエリートはいいよなっ!躊躇なく…人を殺せるのだから…!」
怒りをぶつける
気持ちなんか分かる訳ない
思いなど伝わらない
心を読める訳でもない
フメツは壁に背を預ける
ただ黒蘭を見ていた
「君に…は…何も分からない癖に…知ったようにいわないでほしい…」
弱弱しく言われた言葉
フメツが
黒蘭を見る目が変わった
何処か
怒りが宿り、しかしその奥で悲しみの炎が揺らめいている
『…殺したくて殺してる訳ねぇよ…。俺は争いなんざ大っ嫌いだ、お前の気持ちなんか…俺にはわからねぇよ。甘ったれてんじゃねぇよ。辛いのはテメェだけじゃねぇんだよ』
「っ!!」
『俺だって辛い……、どれだけ自分に言い聞かせても殺した後に残るのは…虚しさ…、いいやそれだけじゃねぇかもな』
『だがな、ここで弱音なんざ吐いたって意味ねぇ、弱音なんざ…ここでは必要とされない。そんなにここにいるのがいやなら軍から抜けろ』
「?!!!」
フメツの冷たい言葉に黒蘭は苛立ちが芽生える
優しさなどどこにあるのだろうか?
散々言われて
これの何処が優しい伍長なのだか!!
「言わせておけば…!!!」
ヒュッ
ダガーナイフが黒蘭の頬を掠める
後ろの壁に突き刺さる
フメツの瞳は
冷め切っていた
『結局は逃げるしかねぇのか?言い訳??自分は辛いからなんだ?皆辛いんだよ。どれだけ人を殺しても罪悪感なんざもうとっくに感じられなくなるのがどれだけ辛いのかテメェはまだしらねぇだろ!?』
「?!!……フメツ伍長…?」
『期待なんざ…されても俺はこたえられないのわかってるって…皆知ってるって…!!』
(苦しい!!!)
心が叫ぶ
苦しいと
哀しいと
なのに
何一つ声に出せない
声に出せばきっと、もう戻れないから
我慢して我慢して
ずっと
ずっと溜め込んで
沈んで
フメツは我にかえる
そして一言、すまねぇと言う
『…黒蘭、これからさっきみたいな事があるかもしれねぇ…だけどな…弱音は吐くな。上官はいつでも見てる…、もし溜め込みすぎて苦しくなったら俺に言え、八つ当たりしてもいい。一人で苦しむな』
「……君はどうなんだい…、一人で抱え込んでるのは…フメツ伍長、君じゃないのか…?」
『俺が?まっさかな…、んなわけねぇーだろ』
苦笑したように言うフメツ
あ、笑った
黒蘭はホッとする
何故?
分からない
ただ
フメツには先ほどの表情は似合わない
そう思ったからだ
『…とりあえず…今はゆっくり休みな。上官には俺から言っておくからさ。任務は俺一人でもできるからな…。』
黒蘭の頭を優しく撫でるフメツ
それに安心したのか
緊張の糸が切れたのか
黒蘭は静かに瞳を閉じ
眠りにつく……
「フメツ伍長」
フッと誰かに名を呼ばれる
振り向けば上官が立っていた
「フメツ伍長、少し話しがある。実験室に来てくれ」
実験室…?
フメツはそこに疑問をもった
何故話しだけで実験室へ行かなければいかないのか…
だが上官に問う事はなかった
『はいよ』
そう言うフメツ
黒蘭に毛布をかける
『…いつか、誰も傷付かない…傷付けなくていい世界が来るといいな……』
『なぁ、黒蘭』
また優しく頭を撫でる
そして微笑むと、上官の後ろをついていく
部屋のドアが静かに
閉じられた
その時はまだ
己自信が殺戮兵器にされるなど
考えもしなかった……
END