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□eps.10 クリスマスの前夜に
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〜side L〜
「L、大変!!メロがいないの!」
深夜1時をまわった真夜中に
慌ただしく私の部屋を訪ねてきたマキアは息をきらしながら開口一番そう告げた。
栗色の長い髪の毛には寝癖。
パイル地のゆったりとしたワンピースタイプの寝巻き姿に羽織っているバーバリーチェックのストールが乱れている。
マキアのただ事ではない様子はすぐに見て取れた。
「マキア、できればノックをお願いします。それから寝癖がついてますよ。」
「あ、ごめんなさい。違うの!非常事態なの!」
マキアは一瞬寝癖を恥ずかしそうに直す仕草を見せた後、すぐにはっとしたように困惑の表情を浮かべ、ドアの側に立ったまま堰を切ったように話し始めた。
「さっきトイレに起きたら眠れなくなっちゃって、ホットミルクを飲もうって冷蔵庫開けたら、明日のお菓子作り用に買い置きしておいたチョコレートが無くなってて
もしかしたらメロが・・・って。
それで私、あの子が虫歯にでもなるといけないからって思って部屋を訪ねたら、ベットに居なくて。同室のマットに聞いても知らないって言うし・・・。」
息継ぎもせずに喋りきったマキアの表情はみるみる曇って行った。
「落ち着いてください。メロはああ見えてとても優秀な子ですから心配は要りませんよ。」
「でもこんな真夜中に居なくなるなんて。あの子になにかあったら・・・L、どうしたら。」
あなたは何て顔をしてるんですか。
今にも泣き出しそうな顔をしたマキアに無意識に伸ばした手を、彼女の頭にそっと置いて微笑む。
「大丈夫ですよ、マキア。貴方が頼ってくれたのは運良く世界の名探偵です。」
マキアは急に気が抜けたというようにその場に膝を折って座り込むとその表情を一転させた。
「Lがいてくれてホントに良かったわ。」
柔らかく笑うマキアを見て、不謹慎だが彼女のヒーローになるチャンスをくれたメロに感謝した。
・・・私はズルいですから。
「マキア、大袈裟です。
とりあえず何も知らないと言った同室のマットは
メロに買収された可能性がありますので私は彼をあたってみることにします。
まあそういう訳でメロのことは私に任せてマキアはもう寝てください。
明日のスイーツから報酬を頂くつもりですからマキアに夜更かしされては困るんです。」
「もう・・・Lったら。ありがとう。私に何かできることがあったら言って下さいね。」
彼女の性格上何を言ってもメロの無事を確認するまで待っているんだろうと思いながらも
私はマキアを部屋に帰るように促した。