恋人はSP

□いつも隣に
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最初は小さなクシャミだった。


SPとして多忙な日々を送る昴は久しぶりの休暇を明子と過ごしていた。
長すぎる夏が終わりを見せつつあり、朝晩の寒暖さが極端になりだした、歓楽街の一画で久しぶりのデートを二人は楽しんでいた。

「大丈夫か?」
ティッシュで鼻周りを拭く明子に昴は気づかう声をかけた。
昼間の暑さは夕暮れにさしかかって冷え込み出した。
明子は薄手のカーディガンを持っていたが日中の暑さで車の中に置いてきていた。
「はい。大丈夫です」
しかし、またクシャミが出る。
「もう戻ろう。体が冷えちまう」
「でも、お店の予約が…」
この後は昴のよく知る店で食事をする予定だったがまた次に回すことにした。
「キャンセルだ。お前の体の方が優先する」
「キャンセルって、せっかく昴さんが予約してくれたのに…」
「また今度行けばいいだけだ」
付き合いだして解ったが明子は体が弱い。
風邪をひくと2、3日寝込んでしまう。

人の往来があるなか、構わず昴は明子を自分の胸に引き寄せた。
「昴さん…!恥ずかしいですよ」
「駐車場までこうしていれば体も冷えないだろ」
彼女の申し訳なげな顔なんて見たくなかった。
スーパーで食材を買って、明
子の部屋で食事する事にした。
その後、ベッドの中で明子の甘い声を聞いたのは、男の本能と言う奴で…。
昴が泊りにきてもくつろげるようにと、昴自身があつらえたダブルベッドで、明子は乱れた。
本当は自分の部屋で明子を可愛がってやりたかったが、次の日はもう仕事。
明子を一人で電車に乗せて帰らせるなんて願い下げ―ちゃんと帰れたか気になってしまう。
「今日はいいか?」
昴は限界に達していた。
「は…い…」
(くそっ…そんな顔と声しやがって…反則だ)
背中が迫る快楽にぞくぞくする。
明子の汗ばんだ肌、顔に張り付く髪、快楽に染まった表情…普段の明子より艶かしい。
昴は絶頂に向かって激しく明子を突いた。
泣き声ともつかない喘ぎを明子はあげた。
昴の腰の動きが激しくなるほど、明子の中が昴を締め付けてくる。
「昴さん…っ…私…」
明子の息が荒い。絶頂に達しようとしていた。それは昴も同じ。
「俺もだ…もうっ…出すぞっ」
昴は明子の中に熱の全てを注ぎ込んだ。
情事後のキスをし、しっかり抱き合ったまま眠り、朝を迎えた。
起床後、そして昴が仕事に出る時までは明子はいつも通りだった。
いや、クシャミをよくしていたか。
「俺に抱かれて体が暖ま
ってないのかよ」
玄関先まで見送りについてきた明子を強く抱き締めて冗談を言った。
「もう…意地悪言わないでください」
胸に顔を埋める明子の髪を撫でキスをしようと昴は明子の顔に手を添えた。
触れた頬が微かに熱い…照れて頬が紅潮しているのとは違う違和感。
「おい…熱があるんじゃないか?」
「多分…少し頭がぼうっとします」
「疲れさせたか…」
「昴さんのせいじゃないですよ。すぐ良くなりますって」
明子はいつもの笑顔を向ける。
「今日の仕事は都内だから、帰りに寄る」
昴は何か言いかけた明子にキスをして黙らせた。
「じゃあ、行ってくる」
「…いってらっしゃい」
何時までも触れていたい…名残惜しさを残しながら昴は仕事へ向かった。

そして、仕事を終えた昴が明子の部屋をたずねると―

彼女は発熱していた。
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