王子様のプロポーズ2

□彼女はラッシー
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私の名はロイド。
伝統あるフィリップ王国は王室スペンサー家に代々お仕えする執事だ。

私がお仕えする主、ヘンリー様は第一王位継承者であり時期国王である。
容姿は前国王ウィル様のお若い頃に大変よく似ておられ、財界のご婦人からご令嬢に至るまでヘンリー様に魅了されてしまう。
国民でさえ、テレビや雑誌等で見る涼やかで優しいヘンリー様の笑顔に魅了されている。
一見すればヘンリー様は繊細で物腰柔らかな方に見えるが…。
その実態は…


ヘンリー様の執務室に、パソコンのキーを叩く音だけが響いていた。
「ロイド、次の資料を」
某企業のデータを照合するための次の資料を私はヘンリー様に差し出した。
「…恐れながら、ヘンリー様。明日も公務が控えております。もうおやすみになられた方が」
執務室の時計は既に23時を指していた。
「今更、小言か?ロイド」
上目遣いに私を見るヘンリー様の碧眼は、真冬の海のように冷たかった。
「お祖父様の築き上げた土台を良いことに、不正や癒着を重ねている企業はいち早く摘発しなければならないのだぞ」
「心得ております。ですが」
私は言葉を飲み込んだ。
ヘンリー様の凍てついた眼差しが、私を射抜いたからだ。
「お前は、俺のなんだ?」
「…専属執事にございます」
私が答えると、数分執務室に沈黙が生じた。
感情のない視線にさらされて、私はなんともいえない居心地の悪さを覚えた。
やがてヘンリー様の口元に冷笑が浮かぶ。
「休みたいならはっきり言ったらどうだ?」
画面と資料を見ながら、ヘンリー様は続けた。
主を差し置いて、休む執事がどこにいるというのか…
返答に窮すると分かっている事をヘンリー様は、言ってくる。
以前ならば、いくらでも反論していた。
親友として…
しかし、今この方はフィリップ王国の時期国王。
「失言を致しました。お許しを」
私は静かに一礼し、主からの許しを待った。
「ごめん、ロイド」
驚き顔を上げると、そこには、爽やかに微笑するヘンリー様の顔があった。
「お前の気遣いを勘違いしてしまった」
私の全身に寒いものが走った。
「労ってくれるお前の為にも、このヤマを終わらせたい。手伝ってくれるよね?」
それはまさに、極上の氷の微笑。
そして私は…

撃沈した…
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