創作

□大切なもの
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好きだった。大好きだった。愛していた。
…彼女が死んだ。


「ねぇ…誰、が殺したの…?君を殺したのは誰?
だれか…、こたっ、答えてよ!!!」


薄暗い部屋の中には、返り血を浴びた僕の声が、空しく反響するばかりである。









下校中、彼女はいつもと何ら変わりない笑顔を僕に向けていた。


「お兄ちゃん、ちょっと目赤くない?あ、また夜中までゲームやってたの?
私だって我慢してるのにずーるいっ!」


「我慢してるんじゃなくて、寝ちゃうからやらないんでしょ?まだまだ君はお子様ってことです。」


「双子なのにお子様も何もないと思う…あ、」


妹は元来人嫌いで、道を歩いていても、学校にいるときでも、僕以外とは口をきけない。
ところが、今日は違った。


「あ、あの…また明日…っ」


「…お、またあした〜!」


見知らぬ男子生徒に声を掛けた。また明日って、言った。

嘘だ、嘘だ、ありえない。僕は混乱した。


「…ぉ兄ちゃん?」


と、呼びかけられて、思考が現実に追いつく。


「ぇう、うん…帰ろ。」


無意識に彼女の手を握って歩き出す。
大丈夫、大丈夫。僕は信じない。









とりあえず、心を壊せばいいんじゃないかなって、思った。
でも、――――間違えた。失敗した。

ちゃんと心を刺したつもりだったんだけどな。
何がダメだったんだろう。どうして君は血まみれなんだろう。
もう僕には何もわからなかった。




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