03/23の日記
22:19
過去、現在、未来@
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初めて笑いかけてくれた人だった。
初めて温もりをくれた人だった。
初めて好きを教えてくれた人だった。
初めて怒りをくれた、
初めて絶望を教えてくれた人。
ああ、何もかも、俺の全てはあの人によって作りあげられ、あの人によって壊される。それ程依存した特別な人だったのに、俺はあの人を己のせいで失ってしまった。
***
「ナルトー!そこのゴミ集めるから持ってきてー!」
現在下忍7班で草むしりの任務中。あれから8年、あの人の姿を追って、情報を探るも未だ手がかりのない状態が続いていて、いつこの二重生活を辞めて、あの人を探すことだけに専念しようかと本気で考えるようになったこの頃。
キィィン
耳鳴りのような感覚に一瞬眉をしかめそうになったが次いで感じた懐かしい気配に鳥肌が立った。
(まさか…)
今の状況を考える間もなく、俺は気配の方へ走っていた。
「ちょっと、どこ行くのよ!?」
サクラの呼び掛けも耳には入らない。ドクドクと脈打つ音が耳に鳴り続いていた。
ばっ
側にあった林を駆けると開けた場所は湖。気配がよりするそのばに視線をやれば拡がる波紋。迷わず飛び込んだ。
湖の中、遠くに見えた沈む影に俺は逸る気持ちをそのままに、そこへ泳いだ。
間違うもんか
手を掴んだこの人は、8年前に消えてしまったそのままの彼女だった。
ざばっ
岸に急いで、呼吸を確認する。気を失っていたが、なんとか呼吸をしていた。ほっと息を着いた瞬間、サスケとサクラが追ってきて、俺の方へ近付いてきたのが分かる。俺は構わず彼女を抱きしめた。
「ナルト、その子は…
「シズク!?」
遅れてやってきた担当のカカシが驚いたように声をあげた。
「先生、シズクってこの子のこと?」
「ああ…ナルト、とりあえずその子、病院へつれて行こう?」
冷静に声をかけてくるカカシに、焦っていた気持ちが落ち着いてゆっくり身体の動きを再開させた。
「後たのむ」
「うん。すぐに行くから」
かろうじて出た言葉は素になってしまったけど、別にかまわない。何より彼女が心配だからだ。こういう時、事情を知っているカカシがいて良かったと思う。返事をしたからにはその辺のフォローは任せて平気だ。俺は瞬身で病院へ向かった。
「カカシ先生、あの子は誰なんですか?」
心配そうな顔で見上げてきたサクラに、カカシ自身もそれなりに動揺していたが、流石に表情に出すわけにはいかない。苦笑して言った。
「さあ、じゃあ今の任務を終わらせたら話してあげる」
「えー」
非難するサクラに、同じように視線で訴えてくるサスケ。
「ま、先生も手伝ってあげるし、今日はこれで任務も終わりだ」
それからでも、遅くないでしょ?
***
「検査の異常はなし。外傷もないですし、衰弱している訳でもないので大丈夫でしょう」
後ろでカカシ達がシズクの容態を聞いている中、俺はシズクの手を握っていた。自分で診てみたから大丈夫だとはわかってはいる。こんな時の為に医療忍術は習得したから…だけど、シズクが目を覚ます保証はどこにも無い。だから、それまでは不安で仕方なかった。
きゅっ
微かに動いて握り返された手。俺ははっとして、顔をシズクに移した。ゆっくりと、開かれたその瞼、見えた瞳の色は、あの時と変わらない温かい緋色。
「…ここ、は」
辺りを確かめる様に呟かれたその声も、変わらず懐かしい。
「木の葉、病院だ」
震えそうになる自分をなんとか抑えて声を出せば、俺に気付いて顔をこちらに向けた。
「…?」
「…」
「…!」
一瞬の無言の間。俺を見つめるその視線が、記憶喪失かと俺を不安にさせた。が、
「ナルくん!」
がばり、次の瞬間勢いよく起き上がったシズクは俺を触り始めた。
「怪我は!?どこも痛くない?何もされてない!?」
ペタペタ
あの頃は大きく感じた手が、今は普通に感じる。でも、変わらぬ温もりに俺は、じわりと熱いものが込み上げて来て…
がばっ
強くシズクを抱きしめた。
「シズ、クが…無事っ、良かった!」
上手く喋る事ができていないし、後に下忍の仲間がいるのも分かってる。だけど、この安堵感にもうずっと抑えていた感情が涙になって止まらないのはどうすることも出来なかった。
「よしよし、心配かけてごめんね。大丈夫だから、泣いちゃダメ」
「ん。もう、いなくなんなよ」
シズクの言葉と温もりに、次第に落ち着いてきた俺は漸く周りの状況を思い出してきた。やべ、俺今思いっ切り素が出てんなぁ、なんて。でもはっきり言って、シズクが居れば、どうでも良くて、だから暫くそのままでいる事にした。
「ところで、ナルくん。私ってもしかして、めちゃくちゃ寝てたのかな?それとも、時間跳んじゃったのかな?」
突然のシズクの質問に、俺は現実に戻らざるを得なかった。
「ん、後者だよ。シズクは忍との戦闘でずっと行方不明だった」
シズクを発見したのは約4時間前。林の湖に突然現れ、姿はその当時のままだった。
それはつまり――
「はあっ、やっぱり時空間忍術のぶつけ合いは失敗だった…
おかげでナルくんを何年も一人にしちゃったなんて…
ごめんね、ナルくん」
すまなそうに、悔しそうに、俺の頭を撫でる手は、微かに震えていて、俺はシズクに謝るなよ、と意味をこめて首を振った。
「いいんだ…そんなこと。それより、
おかえり、シズク」
「!」
今まで任務から帰ってきたシズクに言っていた言葉。シズクがいなくなって、言う事がなくなって怖かった。
もう、独りは嫌だった。
見つけたら、必ず言うって決めていた。
だから、前みたいに返事を返して。
「ただいま!ナルくん」
ああ、俺はこの人無くしては、幸せなんてありえないんだ。
いつも笑顔で帰ってきてくれるシズクが俺は好きなんだから。
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ナルトの育てのお姉さん設定。
連載な感じで。
増えたら中編かシリーズでメインへ?
簡易設定。
シズク(11)♀中忍。しかし実は当時の暗部総隊長。ナルトの護衛兼監視。両親は産まれて間もなく他界しており、ナルトの両親が引き取る。クシナとは親戚関係。
ナルト(12)下忍。現在暗部総隊長。1歳の時にシズクと出会う。自分を護って姿が消えたシズクを捜す為、4歳で暗部入り。
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