小説
□「月世界」
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真っ暗な夜空に浮かぶのは
大きな丸い月。
星は霞んで見えないみたい。
たまに雲が月を隠すけれど、
明るい光は消えなかった。
「のう、お主は月にかぐや姫はいると思うか?」
「さぁ?いるかもしれないし、いないかもしれませんね」
月のよく見える夜。
窓辺に2人寄り添って。
ストール1枚で2人の体を包み込む。
「わしはいると思うな」
「見たこともないのに?」
「わしがいると思っているんだから
それでいいのだ」
「そうですね」
2人ピッタリくっついて
窓の外の月を見上げる。
「月から地球はどう見えるのかのぅ」
「青いです」
「む〜…」
頬を膨らませて、左上を見上げる。
男はからかうような目をしていた。
それでもとても優しい目を。
なんだかそれが切なくて
不貞腐れたように俯いた。