小説
□【dolce】 ★
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あたたかい笑顔で微笑まれて
やわらかい手で髪を梳かれて
優しい声で名を呼ばれる
僕だってたまには
貴方に思いきり甘えたい
……dolce……
下から見上げる貴方はとても新鮮。
今日は二人とも仕事が休みで
朝から何かをするわけでもなく、ただ二人
一緒に過ごしていた。
日当たりの良い窓際のソファー。
心地良い日差しが
遠慮なしに入ってきて二人を照らす。
太公望は端の方に腰をおろしていて
その膝に楊ぜんは頭を乗せ、寝転がっている。
特別何かを話したりすることはない。
その沈黙が嫌ではなかった。
ゆっくりと過ぎる時間
暖かい日だまり
そしてやわらかい太公望
楊ぜんは自然と眠りに堕ちていこうとする。
「これっ!こんなとこで眠っては風邪をひくぞ」
太公望の声が耳の奥の方で聞こえてくる。
反応しようと必死に意識を戻そうとするが
眠気の方が明らかに勝っている。